戸田秋谷という一人の武士の覚悟
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月8日 12時53分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
藩の家譜を編纂しながら不義密通の罪で切腹の日を待つ戸田秋谷は家族や村人から慕われており、監視役としてやって来た檀野庄三郎も秋谷の人柄に惹かれ、秋谷が無実であると信じるようになります。
戸田秋谷という一人の武士の確固たる精神が描かれた作品だと感じました。多くのことを語らず淡々と家譜を記し、村人が困っていれば寄り添い、役人相手の息子の敵討ちにも立ち会います。秋谷が無実であることはその人柄などからも伝わってきますが、彼が今の生活を受け入れたのは藩主への思いがあったからだと思います。秋谷は藩や村の様々な実情を目にしてきたにも関わらず、自身の不義密通の罪についても「事実」とされている通りに記し、ただ切腹の日を待ちました。秋谷は切腹当日まで変わらず、自身の武士道を貫き通したその姿は穏やかでいて美しく凛としているように見えて感動しました。全体的に静かな落ち着いた雰囲気の映画で、秋谷を中心とした人物たちの心情を味わえる作品だと思います。