まず最初に言わせてください。
この映画の原題は『Under sandet』です。それがどうして『ヒトラーの忘れもの』になるのか。
「忘れもの」なんて言い方には重みが感じられません。この映画はそんな軽い話じゃない。
ヒトラーの名前を出して注目させる意図があったのかもしれませんが、これほど映画に相応しくない邦題は久しぶりです。
さて、邦題に文句をつけましたが、内容は傑作です。
地雷を素手で除去していく少年たち。ひとつ間違えば死が待っている状況。
これらの場面では無駄のない演出とカメラワークにより、観客に極度の緊張感を強いるのですが、それがこの映画に重みを持たせているのです。
私はこの緊張感を『ディア・ハンター』のロシアンルーレットに見て、大変な衝撃を受けた覚えがあります。
アクション映画では決して感じることのできない、人の死の重さ。それが伝わってくる、観る者に忘れがたい感情を残せるというのは、傑作だと言えるのではないでしょうか。
ちなみにこの映画は、ナチス・ドイツがデンマークに埋めた地雷を、捕虜の少年ドイツ兵たちに処理させた史実がベースとなっています。
史実ではこの作業に従事した2000名以上のうち、約半数が地雷により死亡、または四肢欠損などの重傷を負ったとされています。
最後に。私が観たのはちょうど8月15日終戦記念日でした。ここ数年はこの時期に戦争映画を観ているのですが、強い衝動で始めたわけではありません。ただ戦争を知らない世代として、その悲惨さを認識し、繰り返してはならないと心に刻むための手段として、意味のあることかもしれないと思っています。
ぜひ一度観ることをおすすめします。