海獣の子供
正直私には合わない作品でした。 ジュゴンに育てられたというふたりの少年と、ひとりの少女のひと夏の物語なのですが、海洋生物も少年少女の作品も夏の物語も好きなのに、この映画は合わず。 なんだか登場人物たちがずーっと思わせぶりなことばかり言っている気がして、「はよ本質に迫らんかい」と思いつつ観てしまいました。 ただ、主人公の声を担当しているのが芦田愛菜だということに驚きました。声優も本当に上手です。器用で素敵な女優さんになったものですね……。 あとは、やはり映像美は圧巻の一言。 街並み、海、空、人物、建造物、あらゆるものが細かく、美しい色彩で描かれています。 この絵を観るだけでもこの作品を観る価値はあるかもしれません。 映画館で観れたらすごいだろうなぁ(レンタルDVDで観ました)。 しかし全体的にやはり謎が多すぎて、テンポが良いのか悪いのか、とにもかくにもついていけない印象を受けました。 勝手な話ですが、期待していただけに……。
グリーンブック
「今日は新作、準新作も100円でレンタルできるだって!? 行くしかない!」 と、私は先日レンタルDVD屋へ向かいました。 そうしてなにがしか、自分の嗜好、映画を観るモチベーションに合わせて選定。 その数本の映画の中にこの『グリーンブック』はありました。 この映画、実に様々な要素がこれでもかと盛り込まれています。 舞台は1960年代アメリカ。 荒くれものと冷静沈着なふたりの人物が主人公という①「バディもの」であり、しかもそれは白人と黒人です。 となればストーリーは②「肌の色による差別」に絡むものになります。 冷静沈着な黒人であるドクター・シャーリーは有名なピアニスト。 荒くれものの白人トニーは、失業中にドクター・シャーリーの南部への数か月間のツアーの運転手として彼に雇われます。 つまりこれは③「ロードムービー」としての側面もあるのです。 道中は同行するバンドメンバーはいるのですが、ちがう車での移動。ですので車内は常にふたり。否が応でも絆は深まり、その互いを認め合う様子が実にあたたかな気持ちにさせてくれます(ドクター・シャーリーが、トニーの奥さんへ書く手紙の内容を考えてあげたり、いっしょに本場のケンタッキーを食べたり)。 そうして物語の中には④「同性愛」に関わってくる箇所もあり、私は「おいおい、昨今のアメリカの問題になっているところ、つまりはアメリカ映画の流行りのフルコースやないかい」と思いましたが、しかし鑑賞後、私は「この映画はそのジャンルの集大成だ」とすら思えました。 まぁ、それは置いといて。 そして旅の終わり、ツアー最終日はなんと⑤「クリスマス」なのです。 クリスマス要素までぶちこんできます! だれもがハッピーになれる日、クリスマス。 それが旅のフィナーレということは……? これ以上は言うまい! そうしてこの映画、なんと、なんとです。 ⑥「事実を基にしたフィクション」なのです! まさに流行りのジャンルのフルコース! しかし安心していただきたいのは、先ほども述べたように、その集大成とも思えるほどの感動をくれる映画になっています。 ほんとうに実に上手に料理されているのです。 この6つの要素だけ見ると、少し重い映画なのかな……? と構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。 主人公、荒くれもののトニーは、冷静沈着で感情を表に出すのが苦手なドクター・シャーリーに、難しく生き過ぎないこと、また彼自身のすばらしさを教えていきます(知らず知らずの時も、あえて伝えるときも)。 その姿が、この映画に希望を与えてくれるのです。 トニー自身も最初は黒人差別者で、奥さんからたしなめられていたくらいだというのに。 そう、この映画は⑦「多様性を認め合う映画」でもあるのです。 いつしか主人公ふたりは本当の友人となっていました。 私はこの映画で特に好きなセリフがあります。 トニーが、ドクター・シャーリーに、お互いに音信不通になっているという兄がいるという話を聞き、その後、連絡を取ってみたらどうか? と問いかけます。 しかし、ドクター・シャーリーは「向こうも私の連絡先は知っている」と相変わらずのつれない素振りです。 そんなドクター・シャーリーに、トニーはこう言います。 「寂しいときは自分から手を出さなきゃ」 感情表現の苦手で孤独なドクター・シャーリーに、その言葉はどう届いたのか。 是非映画を観て、その結果を確認してみてください。 そばにいる人を大切にしたくなる、そんな素晴らしい映画になっています。 (個人的にはドクター・シャーリーのように、感情を表に出すのが苦手な方にもぜひ観ていただきたいです) おすすめです!
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