切ない気持ちで食べる年越し蕎麦
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月30日 20時47分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
「舟を編む」は1995年が舞台の辞書編集部の話です。2013年に公開されました。玄武書房に務める松田龍平が演じる変人編集者「馬締光也」が主人公で演じる辞書ができるまでの出版社の世界を、とてもリアリティある世界観で演出されています。
主人公の馬締光也は辞書編集の仕事を送りつつ、下宿先の大家の娘である、宮崎あおい演じる「林 香具矢」と恋に落ち、結婚します。
辞書の校正も5度目を過ぎ、終盤に差し掛かろうとしている中、当初から辞書の作成に参加していた馬締の尊敬すべき先輩であり、辞書の監修者として一緒に働いて来た加藤剛演じる「松本朋佑」は、歳を重ね体調もおもわしくなく、馬締は急いで辞書を完成させようと寝る間も惜しんで仕事を家にまで持ち帰り進めます。
そんな馬締の体調を心配して、妻の香具矢が何か口にしてもらおうと、仕事部屋に雑煮を持って来ます。香具矢はプロの板前で、小料理屋で働いています。そのお雑煮はさぞかし美味しいのでしょう。
しかし馬締は「香具矢さんいつもありがとうございます。」とかしこまって挨拶し、毛布を羽織り、また仕事に没頭します。外の景色も雑煮を持って来たときは明るかったのに、すっかり暗くなるまで雑煮はそのまま手付かずです。きっと冷めてしまっているでしょう。
雑煮は地域によって全く異なります。焼いた角餅が入ってる様子から関東風かと思われます。
醤油ベースの鰹出汁にほうれん草でしょうか?青菜が入ってます。うっすら人参らしきものと、十字に切り込みの入った椎茸、そして鳥肉と思われるものが入ってます。
一体どんな味がしたのでしょう。雑煮を出すところから年明けなんであろうことが伺えます。
その後、馬締の努力も間に合わなかったのか、喪服姿で家に帰る馬締と香具矢の姿が映ります。帰ってすぐに香具矢が、かけ蕎麦を作って二人で喪服姿のまま食べます。年越し蕎麦でしょうか
馬締はだんまりしたまま蕎麦を一口食べ、下唇を噛みながらそっと涙を堪えます。窓越しには雪が降り、画面越しにも寒さが伝わります。暖かい蕎麦を口にして、妻と二人きりでホッとし、突然気持ちがほぐれたのでしょうか。
蕎麦の味が伝わって来るようなワンシーンでした。