低予算ホラー映画のエポックメイキングな作品
2024年1月31日 10時16分
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総合評価:
4.0
サム・ライミ監督のホラー映画は、ほぼ無条件に楽しめる。
笑えて、頭が切れて、遊びが多いからだ。
特に、この「死霊のはらわた」は、文句なしに楽しめる傑作だ。
話自体は、類型を出ない。森の小屋で週末を過ごそうとした五人の若者が、悪霊に取り憑かれ、恐怖の一夜を送るという展開は、チープなホラー映画の典型だ。
だが、当時22歳の青年だったサム・ライミ監督は、直球をストライクゾーンにズバリと投げ込んでくる。
しかも彼は、釣り球を使わない。
ストライク、ストライク、ストライクで三球三振。
そんな感じの描写がスピーディーに続くので、観ていて全く退屈しない。
大袈裟な流血の場面を前にしても、嫌な気分に陥ったり、気が沈んだりすることはない。
むしろ、けらけらと笑って、次の場面を待ち構える。
ただし、サム・ライミ監督は、ホラー映画の文法をしっかり押さえる。
前進移動と後退移動の着実な切り返し。
そして、あまりにも有名なシェイキー・カムを多用したPOV撮影。
霧や泥や雷の効果的な活用。死霊の正体を映し出さない節度。
かくて「死霊のはらわた」は、低予算ホラー映画のエポックメイキングな作品になったのだ。
製作費は三十七万五千ドル。これで興行収入が三千万ドル以上なのだから、サム・ライミ監督としては、してやったりだろう。
危機を次々と切り抜ける、主役のアッシュに扮したのは、自主映画時代からサム・ライミ監督の盟友だったブルース・キャンベル。
そして、映画ファンとしては、編集助手として親友のジョエル・コーエンの名前がクレジットされているのも、ニヤリとしてしまいますね。