ある男の罪の告白
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月21日 11時17分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
主人公が1922年に犯した罪の告白という形で物語が進んでいきます。
妻が受け継いだ大きな農場。
そこを売るか売らないかで揉めてしまう、夫妻。
どちらの言い分も納得するものがあるだけに「もう少しよく相談しあえばいいのに」と感じました。
でも、その辺りで目がくらんでしまうのが人情ってものなのですよね。
夫が選んだ方法は余りにも短絡すぎでした。
殺してしまってどこかにいったことにする。
しかも息子を利用して殺人を犯すというのは考えが浅すぎです。
とはいえ、この物語で興味深いのは妻が「善なる人物」ではない点。
お酒を飲んでかなり下品なことを言うなど、好人物ではないんですよね。
ここで妻が「よき妻」として描かれていたら、物語の印象も変わっていたと思います。
だからこそ主人公が犯した罪への正当性ができてしまうのが、怖ろしいです。
最終的になにもかも失った主人公。
彼がみた妻の幻想は恐らくアルコール依存症によるものでしょう。
後味は悪いですが、人間の業が垣間見える興味深い作品でした。