映画ポップコーンの評価
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原作は、レバノンから亡命して現在カナダのケベック州に住む ワジディ・ムアワッドの戯曲『INCENDIES(火災)』であり、 監督・脚本はドゥニ・ヴィルヌーヴのカナダ映画。 そのカナダではジニー賞8部門受賞、ヴェネチア国際映画祭最優秀作品賞、 第83回米アカデミー外国語映画 賞にノミネート。なるほど、とうなずける内容だ。 映画ではレバノン内戦を背景に、一人の女の壮絶な生き様が浮き彫りとなってくる。 自分はこのあたり、あまり詳しい知識が無いのだが、それでも全く問題なく観られる。 レバノンというのは歴史的にキリスト教徒が多い国らしい。 第一次、第二次世界大戦を経て、キリスト教中心の国家となったものの、 パレスチナからの難民が流入する事によって、そのバランスが崩れ始める。 母親であるナワルの物語もまさにそういう背景が発端となっている。 中東におけるキリスト教徒とイスラム教徒の宗教対立のすごさ。 こういうものに疎い自分にとっては、何でこうなっちゃうのかな、 とつまらない疑問が生じてくる。 スカーフで顔を隠す、十字架のネックレス、 この違いだけで生死を分けてしまうのだ。 バスの襲撃シーンは忘れられない。走る子供。そして倒れる子供。 それを映し出すカメラの距離感が的確だ。 物語は母親が残した遺言によって、その子供である姉弟が 驚愕の真実を追体験していくという展開だが、どうして子供たちに こんなつらい思いをさせるのか、という批判的な意見も出てるようだ。 どうして? って、それは自分の子供たちには、 できれば真実を知っておいてもらいたかったからだろう。 でも口で説明する訳にはいかない。どう考えても口で説明しただけでは この問題の本質が伝わる訳がないからだ。 それに当然の事ながら、子供たちに面と向かってできる話でもない。 ではどうすればいいのか? それはやはり追体験してもらうしかない。 だから大変でも、回りくどいようでも、自分のルーツである場所に 足を運んでもらい、目で見て体で感じ、どんな状況から この恐るべき物語が誕生したのか、きっちりと知って欲しかったのだろう。 そうすれば子供たちもきっと全てを理解して受け止めてくれるはずだ、と。 その上でナワルが出した一つの決断、許すという事。 争いからは憎しみが産れ、負の連鎖を巻き起こす。 それを断ち切る為には誰かが犠牲となり、相手を許していかなければならない。 しかしそれはものすごい苦痛を伴う。簡単な事ではないのだ。 この物語はそこまでを描く事によって、ただエグいだけの話にとどまらず、 もっと大きな問いかけを我々に提示してくれている。
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