ホラーではありません!
2021年8月18日 15時45分
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総合評価:
5.0
まずジャケットをみてホラーだと勘違いし敬遠した方、今年一番の過ちだったと思ってください。
この作品は終始不思議な時間が流れています。そもそも画角が多くの映画と異なり、それだけでも不思議な感覚。それだけでなく、主人公的な存在がシーツをかぶったゴーストであること、その実体がやけにはっきりしているのに、絶対に見えないこと、それがまたこの作品に奇妙さを与えていると思います。
古くから幽霊をあらわすときは青白い顔だったり、おどろおどろしい見た目をしていたり、半透明だったりと様々な手法が用いられますが、そうではない。
亡くなった人の存在を近くで感じるのに、それが恐ろしいわけが、半透明なわけがないのです。この作品を作った方々はおそらくこの点をしっかり理解しているのだと感じました。
そんな彼らの意識がこの作品にさらなる深みを与えているのだと思います。
大切な人が亡くなったとき、『残された側』を描く作品は多いですが、『行ってしまった側』を描く作品は少ないのではないでしょうか。
切なく、もどかしく、ほろりとさせられる1本です。