BLMの源流がわかる一作
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月31日 23時09分
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総合評価:
5.0
昨年は特にBlack Lives Matter運動が広がりを見せ、各ニュースやSNSで取り上げられていたが、その約70年前に戦った1人の作家の話。
ボールドウィンといえば作家というイメージがやはり強いが、本作を見ると彼がどのようにその頭脳と立場を生かして戦ってきたかに気付かされる。公民権運動で印象的なのは、やはり路上での座り込みやブラックパンサーなどの過激派の暴動、そしてキング牧師の「私には夢がある」の演説ではないだろうか。このように多くの人々が実地で戦う中、ボールドウィンはテレビの討論会やインタビューで知性の戦いを繰り広げた。おそらく、道徳や倫理に訴えかけるキング牧師や暴力行使も厭わないマルコムXと比べ、理論で戦うボールドウィンは、白人(公民権運動に反対する人々)にとって最も厄介な相手だっただろう。実際、映画の中で白人の大学教授が討論の場でボールドウィンにやり込められてタジタジとしているシーンも登場する。
ドキュメンタリーというと敬遠する人も多いかもしれないが、映像の作り込みはヌーヴェルヴァーグを彷彿とさせるし、音楽も公民権運動時のプロテストソングから近年のラップまで盛り込み、映画などへの言及も多いので一作品としても十分楽しめる。