志乃ちゃんは自分の名前が言えない
周囲とうまく会話ができない高校1年生の大島志乃(南沙良)は、音楽が大好きな同級生の岡崎加代(蒔田彩珠)と仲良くなり、一緒に行動するようになる。積極的に人と関わることが苦手な志乃だったが、加代に誘われバンドを結成したのを機に少しずつ変化する。そこへかつて自分をからかったお調子者の同級生・菊地が参加してくるが……。
良作。脚本は『百円の恋』の足立紳、さすがですね。 押見修造は好きなのですが、本作に限っては原作は未読。でも随所に押見作品らしい描写が見え隠れしているのが楽しかったです。 しかし思春期の痛々しさを描かせたら現時点で押見修造の右に出る者はいないと思います。 そう言い切ってしまえる程に、描写も展開もツボを心得ているのです。 さて、映画本編のハナシに戻ります。 本作は優れた青春映画ですが、同時に音楽映画としても良く出来ています。 吃音だけど実は歌の上手い志乃が、ギターは弾けるが絶望的なまでに音痴な加代と共に『しのかよ』なるデュオを結成する件は、ずっと見ていたくなるような爽快感に満ちています。しかし、押見作品であるが故に、物語はそんな爽やかさとは真逆の、とてもビターな展開を見せます。 それもまたこの作品の魅力ではあるのですが、どうにも切ない……。 主演の南沙良は。涙と鼻水にまみれた熱演で吃音の少女という難役を見事に演じ切っており、今後の活躍がとても楽しみです。
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