母として、教師として
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年8月7日 18時25分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
松たかこさんが演じる森口という女性教師が主人公の物語です。
終業式のホームルーム。明らかに学級崩壊していると伺えるその教室では森口の話を聞くこともなく牛乳を飲みながら生徒たちが騒いでいます。
そこで森口による「告白」が始まります。
森口の娘が、そのクラスの男子生徒ふたりに殺されたということ。
そしてそのふたりの牛乳に、HIVで亡くなった夫の血液を混ぜたということ。
教室は一気に混乱します。
森口はその日で退職。新学期からはふたりの男子生徒のうちひとりは不登校に。
もうひとりは投稿していますがいじめられることになりました。
一言で言うと森口の復讐劇なのですが、それだけではありません。
HIVは牛乳に血液を混ぜた程度では感染しないものです。
しかし不登校になった少年は、感染したと思い込み、家族に感染させまいと引きこもってしまいます。
いじめられた生徒も感染者であるかのような扱いを受け。
生徒たちの無邪気な残酷さもとても怖いです。
このふたりの生徒に共通しているのは形は違いますが母親との関係に問題があることです。
そこをじわじわと攻めていく森口の復讐の方法に、母親としての森口の悲しみを感じました。
森口が自分の子が大切なのと同じように、ふたりの生徒も誰かにとっては大切な命です。
命を軽々ともてあそばざるを得なかった森口の絶望が悲しく、そして最後のセリフ「なーんてね」に込められた「やり遂げたこと」への虚しさを感じました。
ところどころ演出に不自然なところがありますが、全体的にはいい作品です。