ゆきゆきて、神軍
神戸市で妻とバッテリー商を営む奥崎謙三は、自らを「神軍平等兵」と名乗り、「神軍」の旗たなびく車に乗って日本列島を疾駆する。ある日、自身がかつて所属していた独立工兵第36連隊で、終戦後23日も経ってから敵前逃亡の罪で2人の兵士が処刑されていたことを知った奥崎は、その遺族らとともに真相究明に乗り出す。時には暴力も辞さない奥崎の執拗な追及により、元兵士たちの口から事件の驚くべき真実と戦争の実態が明かされていく。
平和と豊かな暮らしを満喫していた1980年代の日本人に向けて、数々の挑発的な言動を繰り返した奥崎謙三の生きざまが壮絶。戦後のことなかれ主義、21世紀にまで先送りにされてしまった靖国問題についても考えさせられました。 全国紙を発行する新聞社の社長、日本列島改造を叫び続けた首相。大手メディアや権力者をターゲットにした、過激なパフォーマンスには圧倒されます。遂には日本人なら誰でも知っている「あのお方」を、パチンコ玉で狙い撃ちしようとしたという逸話にはビックリですね。裁判での破天荒な振る舞い、実刑判決を受けて出所してからもその暴走ぶりは止まることはありません。 いく先々でトラブルを巻き起こしていく奥崎を見て、数少ない支援者たちも徐々に距離を置いていく様子が印象的です。映画やテレビを通して見ているだけならば害はありませんが、いざ自分の身に降りかかってくるのかと思えば関わりたくないのが大衆の心理なのでしょう。ただひとりだけ彼の側を離れなかった、妻・シズミの胸のうちにも思いを巡らせてみてください。
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