映画ポップコーンの評価
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ポーランド出身のロマン・ポランスキー監督が、シェイクスピアの名作「マクベス」に挑戦し、イギリスで撮った作品が、この「マクベス」ですね。 「水の中のナイフ」「反撥」「袋小路」「ローズマリーの赤ちゃん」「チャイナタウン」等々、ポランスキー監督の映画は、常に悪魔の世界、怪奇と幻想の世界を追い続けていたと思います。 そして、特にこの「マクベス」に、その大いなる、彼の特徴が出ていると思います。 このシェイクスピアの「マクベス」は、様々な形で映画化されていて、黒澤明監督の「蜘蛛巣城」や、オーソン・ウェルズの「マクベス」などが有名ですね。 このポランスキー版の「マクベス」は、出だしの三人の魔女のシーンから、粘っこい怪奇の世界に、我々観る者を引きずり込んでくれます。 そして、この作品の大きなポイントは、マクベスとマクベス夫人を演じる二人の主役。 マクベスにはジョン・フィンチが、マクベス夫人にはフランセスカ・アニスがそれぞれ扮し、怪奇と幻想の世界の王と女王を見事に演じていると思います。 公開当時、ジョン・フィンチが30歳。フランセス・アニスが26歳。 そしてこの若さこそが、ポランスキー監督にとって、人間の生身の本心を、生々しい肉体から爆発させるのに必要なエネルギーだったのだと思います。 終わりの方の魔女の饗宴、これは、まさにポランスキー監督ならではの怪奇の世界になっていたと思います。 私が特に面白いなと思ったのは、ラストシーン。 ダンカンの二人の遺児のうち、下の方の王子が、魔女の洞窟へ近寄って行くんですね。 これは、マクベスと同じことをやろうとしているわけですね。 シェイクスピアの舞台では、この下の王子は、ドラマの途中でアイルランドへ行ったことになって、姿を現わさないのですが、ポランスキーのこの作品では、この王子がマクベスと同じ道を辿ることを暗示して終わるんですね。 これは、深読みしてみると、黒澤明監督の「蜘蛛巣城」と全く同じなんですね。 黒澤明監督の「蜘蛛巣城」が1957年。ポランスキー監督の「マクベス」が1971年。 ポランスキー監督が、黒澤明監督の影響を受けていなかったとは言いきれないと思います。 そして、さらに深く見つめるならば、あの下の方の王子は、身体が不自由ですね。 何となく時代の流れからいって、あの王子はやがてリチャード三世になるのではないか、なんてことも想像できるわけですね。 権力への欲望は、あの時代、マクベスならずとも、綿々と流れていることを、ポランスキー監督は語ろうとしいてるのだと思います。 あの時代だけではなく、我々の心と身体にも、それは流れているのだと思います。 そして、あの下の王子が、身体が不自由だという表現の裏には、現代の我々の心が歪んでいるという意図が、含まれているのではないでしょうか。
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