原題は「ランボーの息子」……って?
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月24日 22時49分
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総合評価:
5.0
「舞台は1982年のイギリス。少年・ウィルの家はプリマス同胞教会に属しており
厳しい戒律の元テレビも見せてもらえない。
そんなある日、ひょんな事から悪ガキのリーと友達となり、
彼の家で映画「ランボー」のビデオを観る。それに衝撃を受けたウィルは
リーと共に「ランボーの息子」という映画を撮り始める~」
何故「ランボー」なのか? ついつい突っ込みを入れたくなりますが、
監督の実体験を元に作られているからだそうです。
まあ、子供の頃は色々なヒーローに憧れますから
それがたまたま「ランボー」であったとしてもおかしくはないということでしょう。
秀逸なのは対照的な二人の少年の描き方です。
ウィルの家はプリマス同胞教会という戒律の厳しい宗派で
俗世間の娯楽が全て禁止されています。なので一番の娯楽は「空想」なのです。
自分のノート一杯に絵やパラパラ漫画を描いたり、トイレに落書きしたり、
水槽に余計な水を入れて印をつけたりと、とにかく一人遊びが上手。
この辺の描き方がすごく徹底されています。
一方のリーは要するに悪ガキ。オープニングの映画館のシーン、
タバコを吸いながら映画を盗み撮りしているその面構えが素晴らしい!
しかし双方とも父親がいない等共通点もある。
そんな二人が意気投合し自主映画撮影に入っていく訳ですが、
途中でフランスからの留学生・ディディエが撮影に加わる事で
二人の友情にひびが入ったりとなかなかすんなりとはいかせてくれません。
こういう少年たちのやりとりが観ているとほのぼのとして楽しいし、
共感できる部分も多いです。
またこの映画は何と言っても撮影(この映画自体の)がメチャクチャ
素晴らしかった! ちょっとした陰影のつけ方にキラリとセンスが光っていました。
特にウィルの家の室内シーン。アーミッシュの様な雰囲気で
三角巾を頭にかぶったお母さんが台所で炊事をしているショットなんて
まるでフェルメールの絵画の様です。空に浮かぶ雲さえも存在感があり、
画面を観ているだけで充分満足のいく出来でした。
最後、劇中に製作していた映画を最後に流すのは、この手の映画では
もう定番になりつつありますが、この映画にはそこにちょっとグッとくる、
ある仕掛けが用意されています。その辺の構成も上手い。
ちなみに「ランボー」を引用するという事でシルベスター・スタローンには承諾を得ているそうです。許可したスタローン偉い! また「ランボー」が観たくなりました。