ザ・ディープ
1984年3月。グリをはじめとする漁師たちは、アイスランド沖から数マイルの海上へと船を出して漁を行っていた。しかし、その最中に想像もしていなかったアクシデントに見舞われて漁船が沈没してしまう。グリたちは、凍りついているかのような寒い海面に投げ出され、体温と体力を失った者から命を落としていく。ついに一人だけ生き残ったグリは、満身創痍(そうい)の状態で陸にたどり着いて町へ。人々から生還したことを絶賛されるが、試練ともいうべきつらい現実が彼に降り掛かってくる。
実話を元にした作品です。 アイスランド沖に漁に出た船。しかし、横転し乗組員は海へ投げ出されます。 季節は冬。アイスランドなので当然寒いです。 そこから生き残ったグリという男性が描かれています。 本作はかなり静かで暗い雰囲気が全体的に漂っています。 作品の概要を説明されると、恐らくはドラマティックなものを期待することでしょう。 本作を観た他の方のレビューをみても「退屈」といったような声がありました。 日頃見慣れているいわゆる「欧米」の作品とは違った文化圏の作品を観る場合、そこが持つ文化を知っておくといいかと思います。 アイスランドは長い期間他国の統治下におかれ、独立したのは1944年と最近のこと。 私が他に好きな映画や絵画などで中欧から東欧のものがあるのですが、そちらも独特の暗さを持っています。 一口に「ヨーロッパ」と言っても、地域によって大きく思想が異なることに注目しておきたいところです。 そのようにかなり暗い作風ではありますが、グリが抱える心の痛みが静かに描かれています。 グリが生き残ったのは「アザラシ」並みの体脂肪が一因であった、というのは少し笑ってしまうシーン。 また、生き残った理由を検証するために、イギリスの海軍の人たちと冷たい水の中での実験シーンもちょっと笑ってしまいました。 鍛え上げられたはずの軍人たちが、次々とギブアップするなかで、グリだけ残っているのです。 個人的に一番好きなのは、海を漂いながら「あと一日だけ生きられたら」とグリが夢想するシーンです。 命の危機が迫っているとき、人が思うのは意外とそんな風に他愛もないことなのかもしれませんね。
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