サクッと観られるけど色々考えさせられる映画
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年9月14日 09時51分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
昭和22年に生まれた松子という女性の一生を描いた作品です。
彼女は二人姉妹の長女で、妹が病弱な為、父親はいつも妹のことばかり気かけている。そんなある日、松子は父親と二人でデパートへ出かけた。屋上で見たショーが面白く、そこに出演していたコメディアンのひょうきんな表情を真似たら、珍しく父親が笑ってくれた。そのことが彼女にとってはとても嬉しく、以降、事あるごとにそのひょうきんな表情をする癖が身についた。大人へと成長した松子は、音楽の教師として働くようになるが、教え子の窃盗がきっかけとなり退職することになる。この一件がきっかで松子の転落人生が始まっていく。
あらすじはこんな感じです。
よくよく考えたらかなりシリアスな話なんだけれども、コミカルでポップな演出となっている為、そこまで重々しい雰囲気ではありません。
それでもやはり辛いです。
何だろう・・・他の方のレビューも見ましたが、松子という人物を不器用と称している方が多いようです。確かにそれもそうなのかもしれませんが、私は「流されやすい・刹那的」といった印象を受けました。
窃盗事件の時も生徒を疑わずに悪者にしたくないという心理は、生徒思いの教師ならそう思ってしまうのかもしれない。けど、だからと言って自分が罪を被る(しかも、その時手持ち金がないからといって他の方の財布から無断でお金を借りて)というのは違うと思うし、やはり「その場を誤魔化せればそれでいい」という流されやすく刹那的な一面が彼女の転落人生の要因となってしまっている気がします。
ただ、松子ってどんな逆境に置かれても変に斜に構えたりすることがなく、常に一生懸命なんですよね。
だからこそ、そんな彼女がどんどん不幸になっていく様を見るのが辛い。
流れやすく刹那的とは言ったけど、そういう一面って多かれ少なかれ誰もが持っていると思うし・・・人生ってちょっとしたことがきっかで上手くいったり、逆に歯車が狂ったりするから、そう考えると他人事とも思えない気がして。
作品を観た後で、タイトルの「嫌われ松子」という表現が気になりました。
確かに松子の一生は恵まれていなかったけど、節目節目で愛してくれた人も数人はいたのに何故あえて「嫌われ」なんて表現をしているのか。
自分は人に嫌われているから何もかも上手くいかないんだと本人が決めつけているからなのかな。
作中に「どんな苦しい思いをしても独りでいるよりはマシ」というような台詞も出てくるし。
そう考えると幼少期、親は病弱な妹ばかり気にかけて自分のことをあまり見てもらえなかったという孤独な経験が、彼女の根深いところでトラウマとなっているのかもしれないななんて思いました。
最後の終わり方がまた切ないです。
自堕落な生活からやっと立ち直ろうとした矢先、あんなあっけない死に方をしてしまうなんて・・・今まで流され続けていた彼女が、見て見ぬ振りもできていた場面で何であえて夜遊びする小学生達を注意したのか。流されることをやめても、結局バッドエンドを迎えてしまうやるせなさに色々と考えさせられました。
余談ですが、個人的に光GENJIファンなので、思わぬところで光GENJIが登場した時はテンションが上がりました(笑)
あと、作中で何度もかかる「曲げて伸ばして」という曲がしばらく頭から離れなくなりましたが、素敵な曲なのでお気に入りです。
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