映画ポップコーンの評価
桐島を空洞にすることで観客それぞれが「桐島とは何を意味するのか」を考えざるを得なくしているからです。もちろんただ「部活を辞めた高校生」としか考えなくても優れた高校生映画として充分機能しますが。(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」より)
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クラスの人気者から目立たない脇役まで、高校生たちの日常生活が様々な視点から映し出されていて共感できるはずです。登場キャラクターが多すぎて、あらかじめ相関図を確認しておかないと作品の世界観に入っていけないのが難点でしょうか。 地味なメガネ姿に冴えない男子高校生の前田涼也を、撮影当時は18歳だった神木隆之介が等身大に演じていました。休み時間になると教室の隅っこで同じ映画部に所属する武文と、キネマ旬報の最新号をめくりながらお気に入りの女優さんについて語り合う姿にほのぼのとします。橋本愛が扮しているバトミントン部の東原かすみに仄かな恋愛感情を抱きながらも、どうしても踏み込んでいけない草食系な性格も憎めません。 バレー部のキャプテンでもありスクールカーストの最上位に君臨する桐島とは、似ても似つかない存在です。映画前半では桐島の突然の退部騒動の蚊帳の外にされていた前田が、後半以降は思わぬとばっちりを喰らう展開にも驚かされました。
朝井リョウ著の同名小説の映画化です。当時そこまで浸透していなかった『スクールカースト』という概念を映像化した作品だと思います。 ある日突然スクールカーストの頂点にいる桐島が、誰にも理由を告げず所属していたバレー部を退部して姿を消します。たったそれだけのことなのですが周りの人間関係に影響を及ぼしていきます。終始桐島は登場しませんが、桐島を通じて様々なキャラクターの想いが錯綜し、ほんの一瞬だけスクールカーストが逆転するカタルシスがあります。見る人がどのような学生時代を過ごしたかで感想が変わる映画です。 主人公を神木隆之介さん、その友人を前野朋哉さんが演じています。その二人が自分の学生時代に教室の隅でわちゃわちゃと楽しそうにじゃれ合っていた男子同級生を思い出させてとてもリアルです。今や主役として活躍する松岡茉優さん、橋本愛さん、山本美月さんなど錚々たるメンバーが同級生として出演しており、そういった面でも楽しめます。
このレビューにはネタバレが含まれています
桐島はどこだー!桐島を出せー!と叫びたくなる映画でした。 桐島はバレー部で学年の人気者でみんなが気にかけている彼が、バレー部のエースというアイデンティティを誰にも相談せずにさらっと脱ぎ捨ててしまいます。自分とは何か、どういう人間かを必死で繕う周りの人たちは困惑します。 高校2年の秋になって、将来を決めなくてはならないのに自分が何になりたいのか、どうしたいのか、自分でも分からない、分かっていてもできるかどう分からない、、、みんなの心が少しずつ動いています。 好きな人を遠くからでも見たい気持ちや、放課後校舎に響く吹奏楽部の練習する音、野球部の声などなど、自分の高校時代にシンクロしてすごく生々しく、自己実現できない息苦しい気持ちや優秀な人に嫉妬する気持ち、誰かに執着する気持ち、孤立したくない気持ちなど思い出しました。観ている人によって感じ方が変わる映画だと思います。現役高校生に観て欲しいです。自分というものは周りに左右されるものではなくて、自分の選択によって形作られていくものなはず。大人になっても高校時代の気持ちを褪せるこのなく持ち続けていた原作者の朝井リョウさん恐るべし。
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