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引用:IMDb.com

桐島、部活やめるってよの町山智浩さんの解説レビュー

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2020年06月17日更新
桐島を空洞にすることで観客それぞれが「桐島とは何を意味するのか」を考えざるを得なくしているからです。もちろんただ「部活を辞めた高校生」としか考えなくても優れた高校生映画として充分機能しますが。(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(https://www.tbsradio.jp/utamaru/)
で、吉田大八督作「桐島、部活辞めるってよ」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『桐島、部活やめるってよ』解説レビューの概要

①人に話さないと狂いそうになる映画!?
②好きなものが見つけられない不幸
③学校内ヒエラルキー
④観た後に『〇〇』を埋めたくなる精巧な映画
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。 TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。 

『桐島、部活やめるってよ』町山さん、宇多丸さんの評価とは

(町山智浩)
よろしくお願いします。

(宇多丸)
そしてその町山さんが不用意に呼んだと言っても過言ではない・・

(町山智浩)
ごめんなさい。勝手に呼んで・・

(宇多丸)
いいんですよ、話したくて仕方ない、コンバットREC!

(コンバットREC)
はいどうも、コンバットRECでございます。

(宇多丸)
ということで、とりあえず酒飲んじゃおうってことで!

(全員)
カンパーイ!

※中略

引用:IMDb.com

飲みながら『桐島、部活やめるってよ』を語る

(宇多丸)
でも本当そんくらい皆『桐島、部活やめるってよ』を皆観て何か言いたくなる映画なのかもしれないですけど。
あの〜、ものすごい溜め込んでるみたいなんで。

(コンバットRC)
観た後に人に話さないと気が狂いそうになるんだよね。

(宇多丸)
本編でね、町山さんの評もいただいたんですけど。
つっても作品評で自分の青春時代に照らし合わせてみたら割と控えめな方なんで。
そういう話はね、まだしてないと言っても過言ではない。
例えば共学と男子校の話とか。ちょろっと言っちゃったんだよね。

(コンバットRC)
あれ?宇多丸さんも今日ハスラーでやったんですよね?

(宇多丸)
あぁ、やりました。
でも極力そっちは触れだすとね?

男子校?共学?

(町山智浩)
えっ、皆、男子校?

(コンバットRC)
違います。僕共学です。こいつとは違って。

(町山智浩)
あぁそうなんだ。僕、男子校かと思った。

(コンバットRC)
あ〜なんだ、男子校かぁ。

(宇多丸)
お前なんだ、その町山さんの男子校と俺の男子校の扱いの違いは。

(コンバットRC)
なんだ、男子校かっていうね。

(町山智浩)
ヒエラルキーとかなかったから。

(コンバットRC)
あ〜。

(町山智浩)
宇多丸くんの高校は、学校自体がヒエラルキーを作っていく学校じゃないですか。

(宇多丸)
そうなんですよね。あの巣鴨プリズンこと巣鴨学園は、成績を全部貼り出してっていうところで。
それもそうだし・・

巣鴨プリズンこと巣鴨学園

(町山智浩)
石丸元章とさ、会ったこと、話したことないの?

(宇多丸)
同じ時期にいなかったんだと思いますけど。

(町山智浩)
彼の方が上だけど歳が・・何かやるといいよ。彼はそれでビリ獲ったんで有名なんだもん。

(宇多丸)
あ〜はいはい。でも俺も全然下から数えた方が早いラインだったんで。

(町山智浩)
うんうん。常に順番をさ、意識させるそうですね。

(宇多丸)
ちなみに高橋ヨシキさんは帰られました。金沢のね映画祭がありますからね。

(コンバットRC)
ヨシキさんとも話してました。

(宇多丸)
ヨシキさんは大絶賛ですから基本的には。

水道橋博士も大絶賛

(町山智浩)
水道橋博士もすっごい絶賛してて、だから観ろ観ろって言われてあちこちから物凄いプレッシャーがあって。で、観たんですけど。
観にいく前、えーって感じで大丈夫かね?って思ったんだけど。

(コンバットRC)
僕も気乗りしてなくて。花くま先生が1ヶ月間Twitterで推し続けてたんですよ、
花くま先生ってすごい映画がお好きなんで、推す映画はよくあるんですけど。
普段だと、3日とか1週間で次の映画に変わるんですけど。
1ヶ月も推し続けてるのって『ヒーローショー』以来なんですよ。
だから、これはちょっと花くま先生がこんだけ言うんだから観ないとまずいかなと思って、
ちょっと時間も空いたしと思って軽い気持ちで行ったら、いやもうビックリですよ。

(宇多丸)
あの『ヒーローショー』に出ている人出てます。
あのパーマの男の子、多分『ヒーローショー』の「カラオケ行かないっすよ。」って子だと思うんだよね。

(町山智浩)
あ〜!

(宇多丸)
多分そうだと思う。

(町山智浩)
チャラい男ね。

『桐島、部活やめるってよ』出演者について

(コンバットRC)
俺、『桐島〜』の前に観た映画、ほとんど忘れてると思う。

(町山智浩)
そういうチャラいキャラなんだ。
あの、かすみちゃんはさ、あの男と付き合ってるけどさ、絶対別れるじゃん。

(宇多丸)
そりゃそうですよ。

(町山智浩)
で20年後くらいに会って、また実は付き合う可能性あると思うの、俺。

(宇多丸)
なんの想像ですか!

(町山智浩)
俺もなんか地下鉄でさ、偶然中学の時の女の子と会ったりしてるからさ。そういうこともあるから。

(宇多丸)
ちょっと待って、中学の、その女の子は付き合ってたんですか?

(町山智浩)
全然付き合ってないよ!

「なんで私あんなつまらない男と!」

(宇多丸)
付き合ってると、「なんで私あんなつまらない男と!」って。
女の子はさ、成長した自分ってのを常に認識しながらきてるからさ。

(町山智浩)
結局スポーツなんてやってたってさ、社会入って社会人になってスポーツなんてなんの役に立つのよ。

(宇多丸)
あいつのいう、おまったーの彼が言うことが正しいですよね。

(町山智浩)
いやだから、それに宏樹は気づいちゃったわけじゃん。
これやってて、それで全国大会に行って、それでスーパースターにならないんだったら、何の為にやってんのって。
先に気づく、高校時代に気づくってことは非常に不幸なね、事態になったじゃないですか。

おまったーの彼が言う正しいこと

(古川耕)
でも、彼はやればできちゃう子なんだから、本気でやったら。
だから逆に宏樹が最後に気づいちゃう時点で、こんなになんでも持ってるやつが、気付きだと。
そんなことされて堪るかと。

(町山智浩)
そんな武器は与えたくないよね、あいつに。

(古川耕)
おまったーのあいつの、「不毛なことやらせといてやる!」っていう。
それだけがこっちのアドバンテージだったのに。
しかも宏樹が一番俯瞰した視点を持ってるじゃないですか。
だからもう彼こそ超人ですよ、超人。

(町山智浩)
怖いもんなしになっちゃった。

(古川耕)
ニーチェの超人ですよ。

ニーチェの超人

(町山智浩)
やっぱり夜道で上からブロック落として叩き割った方が・・

(古川耕)
なんてひどい目に・・

(コンバットRC)
なんで単純化して語ろうとするの。
男子校ノリ。

(宇多丸)
じゃあレックのため込んでるの聞こうじゃないの。

(コンバットRC)
俺もう苦しくて苦しくてしょうがなくて。
すげー苦しかったの。

(宇多丸)
誰か特定の人に感情移入したとかじゃない?

余裕がある状態

(コンバットRC)
特定・・って言うか僕のポジションの人は直ではいなくて。
最初は結構客観的に観てたんですよ。なんか、「あぁこうやってずっと金曜日やってくのね、はいはい。」って思ってたんですよ。
「あぁこういう人がいて、こういう人がいて、こういう人がいて、こういうグループがあるよね。」と。位で観てて。
まぁ主人公の前田もこういう感じねって観てて、最初こんなん余裕あるから、バド部の子が腕触った瞬間、
「あ、レズシーンあるぞこれ。」て。

(古川耕)
余裕がある状態。

(コンバットRC)
そう、余裕があって。みたいな感じだったけどね。
もうね、週が明けたくらいでは気が狂いそうになってたt。

(宇多丸)
あぁ、バレーの試合があって、風助くんがイマイチ活躍できなくて。
で日曜出会っての、翌週くらいからもう。

(コンバットRC)
っていうか、皆が桐島がいないことによって右往左往しだすじゃないですか。
もう週明ける前なのかな?皆右往左往してるの見て、弱さが描かれるじゃないですか。

(町山智浩)
うんうん。

自分の弱い所突きつけられる

(コンバットRC)
その弱さが、全員俺じゃないの?っていう。全部が自分の弱いところ突きつけられてる感じになって。
全員俺だったっていう。だから屋上シーンに関しては、そんなに弱くない人っていうか高校時代、神木くんね・・前田のように生きた人にとっては単純にスカッとするんだと思うんですけど。
僕はだから最初から前田と、野球部のキャプテンが圧倒的強者にして描かれていて。
弱者が、ヒエラルキー上位の人たちっていう見え方になっていて。

(宇多丸)
むしろ最初から逆転してるんだ!

(コンバットRC)
あの屋上に行く前から強者なんですよ。

(古川耕)
要するに宏樹目線になってるんだ、むしろ。

(コンバットRC)
うん、宏樹とか、あの辺全部だと思って観てるんで。

(古川耕)
確かにあのバレー部の風助くんなんて特になんの救いもないままさ、退場ってことになっちゃってるから。
やっぱ気になりますよね。どうするのかな、この彼はこの後みたいな。

(町山智浩)
でも彼女はわかってくれてたじゃん、1人。

(古川耕)
まぁね。実果ちゃんは付き合うから、あれ。

付き合う

(町山智浩)
わからないけど。高校時代付き合ったってどうせすぐ別れるだろ。

(コンバットRC)
いやでも、とにかく苦しくて。
もう、最後でも、屋上シーン僕がカタルシスがなかったかっていうとそうじゃなくて。
自分の弱いところを全部殺してもらってる気がして。
そこで救われてる感じがしたんだけど。

(古川耕)
面白い!

(コンバットRC)
その後さ、宏樹と前田が交流をして、宏樹が、「これは変われるかもしれない」と思うと、やっぱ変わんないコイツっていう終わり方じゃないですか。
あの後は。結局電話してる訳だから。

(町山智浩)
あ〜電話してるからね。

原作版や小説について

(宇多丸)
あのね、原作版とか小説とかシナリオもそうなんだけど、あれは桐島に電話しながらグラウンドの方に向かうみたいな終わり方になってる。
で、映画はでも描き方がちょっと変わってると思っていて。
電話してるうちに、桐島に電話を掛けるんだけど、やっぱ野球のグラウンドが気になっちゃって。
もう、なんか、俺は電話掛けてるとかどうでもよくなっちゃったように見えるんですよ、映画は。どっちかっていうと。
で、桐島をまた学校的空間に引き戻すっていうのは、全然ハッピーエンドでもなんでもないっていうか。
それ良くないって感じじゃないですか。だからそっち側にちょっと実際の映画は軌道修正してるかなって僕は見えたんですけど。

(町山智浩)
だって二段階でさ、野球部の先輩が良かったのは関係ないじゃん。「俺もうやりたいからやってるんだからさ」っていうことでさ。

(古川耕)
彼は同じ運動部なのに、全然桐島の件にはね感知してない。

才能あるとか関係ないよ

(町山智浩)
俺好きでやってるから。才能あるとか関係ないよって言ってやってるじゃん。
それ聞いた時に、すごい宏樹が悲しそうな顔になってショック受けるじゃん。
で、第二段階でさ、神木くん・・前田にさ「俺、映画好きだからやってるだけだけど。」って言われてさ。
もう泣きそうな顔になっちゃうじゃん。「いいな、こいつら。」って感じの。「いいなー!こいつら!」って感じじゃなく。
俺はなんでも持ってて、女もヤリまくりだし、もうスポーツもできて、多分勉強もできるんだよね彼ね。
なんでもできるけど、「うわ、俺こいつらみたいに大好きなものないや・・」っていうさ。

(宇多丸)
好きなものが見つけられないって、一番の不幸ですよね。

(町山智浩)
そう、すごい悲しい顔になっちゃうんだよね。俺何にもないじゃんっていうさ。かっこいいって、カッコだけじゃんって。
あれ原作の方には「空っぽ」って言葉で書いてあるけどまさに「見た目だけだよね俺。」って言われちゃった感じなんだよね。

(宇多丸)
ただね、かっこいいのよ充分ね!最高だな!

(町山智浩)
まぁ20年後は関係なくなるから。

(コンバットRC)
でもさ、宏樹に対して冷たいこと言うのやめて欲しいんだけど。

(町山智浩)
冷たくない、冷たくない。

(コンバットRC)
あいつ、超いいやつじゃん。

(町山智浩)
そう、良いやつなの。

宏樹は良いやつ

(宇多丸)
彼が一番主役じゃないの?

(コンバットRC)
まぁ僕が宏樹のようだったかというと違うんだけど。あの中で言うとポジションはないんだけども。
なんかでもあの映画って、高校の頃自分がどうだったかっていうのと、
自分が自分をどう思っているかによって観た感想が全然変わる映画だなと思ったんですよ。
だから僕は自分の嫌なところとか、自意識過剰タイプだから常に自分の嫌なところばかり気にしている気にしいだから。
嫌なところは全部自分だって見えちゃう訳よ。

(古川耕)
あ〜。

キャラへの感情移入

(コンバットRC)
でもあんまり普段そこ考えてない人が見たら、嫌な所ここだなって1個しかない人が観ればそのキャラに感情移入できるのかもしれないし・・
っていう映画かなと思って、すげーなこれって思ったんですよ。
でも人によっては、町山さんとかそうだと思うんですけど、前田が俺だって思える人もいるだろうし、
それはそういう生き方をしてきた人はそうだと思うし。
どうしてもこういう話してると、今まで観てきた人何人かと喋ったんですけど、やっぱ「高校の時どうだった?お前。」って話になってくんですよ。
それをお互いに言い合う話になってくじゃないですか。

仕掛けの成功

(町山智浩)
仕掛けがすごい成功していると思ったよ。
やっぱり分からないところを空洞で残しているからさ。
皆でこう、埋めなきゃなんないからさ。
だから皆、観た後話したくなっちゃうんだよね。
でも最近の映画ってさ、テレビもそうなんだけど、空洞とかさ、余白を残してないからさ。

(宇多丸)
もしくは単に下手かっていう。

能動的に見る映画

(町山智浩)
下手かっていうね。
観終わった後さ。結局あれってなんだったの?とか一個もないから、誰も話す気しないんだよね。
だから本当にね、能動的に見る映画っていうのを久々に観たんですよ。本当に減ってるので。

(宇多丸)
しかもこんだけ分かりやすく作ってるのにですよね。話として分からない所が一箇所もないのに。
でもちゃんとこう・・

(コンバットRC)
いましたけどね、観終わった後に、「え?なにこれ?」って言ってる人は結構いたんですけど。
その人たちはでも多分、そこをまだ客観的に観てないんじゃないですか。

(町山智浩)
だからこれ埋めてねってことだからさ。ここ空白ありますよ、埋めてくださいお客さんって言ってる訳だから。
でもそういう癖がついていない人はさ、結局何?で終わっちゃうんだけど。

(古川耕)
何を伝えようとした映画か分からないかもですね。

「高校の話だよね?俺関係ないよね?」ってそういう話じゃないんだよ

(町山智浩)
そうそう、分からないと思うんですよ。
だから「高校の話だよね?俺関係ないよね?」ってそういう話じゃないんだよって。
これはたまたま高校の世界に凝縮させてるんだよっていう。
これは昔からよくある舞台劇の手法を取り入れているだけだから。

(コンバットRC)
手法自体はだからそれ程斬新っていう感じではないんですよね。必要なものを組み合わせたというか。

(宇多丸)
いやでもここまで同調圧力感みたいなものを言葉にせずにヒリヒリした空気感・・
日本の青春映画っていうのはあまり思いつかないなぁと。

吉田大八さん、すごいんですよね。まじですごい。

(コンバットRC)
吉田大八さん、すごいんですよね。まじですごい。
ちょっとした目の動きだけでこれだけ伝えるって、今まで俺観たことないかもしれないと思っちゃったもん。

(町山智浩)
だからなんていうの、顔の良い女の子4人組がさ、実は全然心で繋がっていない感じがさ、スッゲー嫌なんだけど。
男にはないもんね、ああいうのは。

(コンバットRC)
いや、そうでもないですよ。

(町山智浩)
男で顔が良いのだけで心が繋がってないなんてあるの?

(コンバットRC)
いや、そうじゃないんだけど。でもあの苦しさは男の方にもありますよ。

俺部活嫌なのに辞められない

(宇多丸)
でもあります。巣鴨プリズンの、特に高校時代はまだマシだった。自分の経験で言うと、中学時代無理くりサッカー部に入ってたことがあったんですよ。
全然得意じゃないし、好きでもないのに。その時つるんでた仲間が入ったからってだけなんだけど。
そこんときの、なんか、もういろんな高度を気にしながら、ちょっとヘマなことすると、要はプリズンだからさ。
一個自分の地位が・・ヒエラルキーが下がることを、死を意味するっていうか。
だから俺部活嫌なのに辞められないんですよ。辞めるともっと烙印を押されちゃうから。

(町山智浩)
女みたいな世界があるんだ。

(宇多丸)
本当本当本当。

(町山智浩)
女ってOLでもなんでもそういうの作るじゃん。グループ作って。

女のグループ、女の世界

(宇多丸)
そうそう。だから俺は中学サッカー部の時の人間関係が、今まで40何年間生きてきた中で、やっぱり一番愚劣なアレで。
やっぱりそれが嫌になったのもあるし、高校になると皆それどころじゃなくなるってのもあるんだけど。

(町山智浩)
じゃあ、楽しくないのにこの4人がいるじゃん。全然仲良くないし楽しくないんだけど、この女4人組が。
顔が良い同士だから、なんかいるんだよね。4人で。

(宇多丸)
まぁヒエラルキー上で支配することに快感を覚えている側はそれでも楽しいのかもしれないと思うんだけど。

(町山智浩)
だからなんだっけ?宏樹の彼女が一番愚劣な女なんだよね。

(宇多丸)
沙奈ちゃんね。

(町山智浩)
そう。で、宏樹がキスする時もさ、全然やる気なさそうじゃん。
全然楽しくないんだけれどもヒエラルキー上、トップにいる同士が付き合わなきゃみたいなことで付き合ってるのがすっごく嫌な感じでさ。

(宇多丸)
沙奈ちゃん自身もあんなキス楽しくないはずですよね。

沙奈ちゃん自身もあんなキス

(町山智浩)
だって彼、この女のこと全然好きじゃないのはキスすれば分かるでしょ。ねぇ。

(宇多丸)
だからこれも虚しい話だし。

(町山智浩)
形だけなんだよね。
トップクラス同士だから付き合っているっていうね、本当に意味ないね、あれね。

(宇多丸)
でもその感じ、巣鴨プリズンはありましたよ。
それこそその高度から外れたらだいぶ良くなりましたよ、僕の青春も。
高校はすげー楽しかったんだけど、中学のその無理くりそのチームにいた時はやっぱもう暗黒ですね。

(コンバットRC)
ちょっと意外ですね。

(町山智浩)
意外。そんなところにいたんだ。

男子校ってもっと人間関係が単純だってバカにしてた

(コンバットRC)
俺、男子校ってもっと人間関係が単純だってバカにしてた。ごめん。

(宇多丸)
鴨特有なのかなんなのか分からないけど。でも一個そこから外れたら、そのチームからは完全にバカにされる位置にいっちゃったんだけど。
でも俺としてはすげー楽しい青春になったね。

(町山智浩)
だから自分自身になれるからだよ。結局この女4人は自分自身になってないじゃん、全然ね。意識してるかしてないかだけど。

(コンバットRC)
高校の時の僕はそんな感じだったんですよ。

(町山智浩)
え?誰かを演じてたの?

(コンバットRC)
演じてはないんですけど・・

(町山智浩)
合わせてたの?

高校の時。。

(コンバットRC)
合わせてもないんですけど・・僕の中身は今と全然変わってなくて。趣味とかもこのままなんですけど。
高校に入学して一学期終わる頃に人間関係できてくるじゃないですか。二学期の頭とか。
何にも考えないでいつも通りやってたはずなんですよ。で、二学期開けてふと気づいたら、俺のつるんでるチームがあれ?と。
言ってしまえば宏樹たちみたいな感じで。でも俺の中身は前田な訳よ。「あれ?俺なんでここにいるんだろうな・・」ってことになっちゃって。

(古川耕)
それ周りが色気付いてきたってことなの?

(コンバットRC)
いや、最初の頃ってお互い趣味とかもよく分からないし、とりあえず高校入った最初の時って席近かったやつと友達になったりしていくじゃないですか。

(町山智浩)
でも実は関係ないなって思ったりするんだ、後から。

(コンバットRC)
そうなんです。で、気付いたら俺そのチームにいて。で俺、一生懸命今と同じでジャッキー・チェンの話とかしてるんだけど、
皆に「お前バカじゃねーの?」って、襟巻きとかげ感なんですよ。
だから別にいじめられたりとかもないし、仲良くやってるし、そいつらも皆いいやつなんだけど、
なんか違うよなって思いながら、3年間そこにいたんですよ。会話が通じないまま。ずっと襟巻きとかげのまま。

(宇多丸)
向こうはでもさ、レック面白いよなってことはなかったの?

(古川耕)
話を聞いてもらえなかったってこと?

襟巻きとかげ感

(コンバットRC)
まぁ多分あったんだろうとは思うけど。でもこっちとしてはさ、言いたいことが50ページあるとしたらさ、1ページ目くらいで「面白いな。あはは。」で終わっちゃうんですよ。
その先とか、俺一生懸命喋ってるのに誰も聞いてないみたいな感じで。でもうちはまぁ千葉の奥の方だったのもあって、多分趣味の話・・もしかしたらいたのかもしれないけど、
周りのクラスとか隣のクラス見渡しても話が合う人はいないんですよ。
で、じゃあ俺はずっとあのチーム抜けないで、話が合わないのに、皆それぞれいいやつらだとはいえつるんでたのは、多分きっと孤立を恐れてたんですよ。
で、孤立を恐れている俺っていうのは、あの女子グループを観ているとすごい感じて。
だから女子グループも、観て、身につまされるっていうか。だから全部苦しいんですよ。どこ観ても、この映画。
どのグループを描く番が来ても苦しくて、映画部が描かれても、俺は本来ならこう生きるべきだったっていう。
そう生きなかった苦しさもあり。

(宇多丸)
そっかそっかそっか。

(コンバットRC)
どこ観ても苦しいんですよ、この映画。楽な所が全然なくて。

(宇多丸)
それ、でも誠実な見方だね。

(町山智浩)
自分に引き寄せて観ることが一番良いことだから。

(コンバットRC)
でもそういう映画じゃないの?

(町山智浩)
そういう映画でしょ。

自分に引き寄せて観ることが一番良いことだから。

(コンバットRC)
なんかもうとにかく苦しくて。もう気が狂いそうなところで、あの屋上シーンのカタルシスっていうのがありましたね。

(宇多丸)
でもあっちチームはそれで救われるなんてことないからね。

(コンバットRC)
でもあのシーン描かれている最中は、その俺を殺してくれてるっていうのがすごい楽になったんですよ。
俺の中の前田が、俺の中のあいつらを殺してくれてるっていう。

(町山智浩)
これレック的な完結した宇宙。
だから1人の中にある色々な面がバラバラになっているってことだから。

(コンバットRC)
っていう感じだったんですよ。

(古川耕)
でもすごいね。俺の中の前田が俺の中の嫌な所を殺してくれるってすごいね!

俺の中の前田が俺の中の嫌な所を殺してくれる

(町山智浩)
でも映画におけるさ、適当な見方ってそういう風に作るよね。
だから宮崎駿なんか典型的で、悪役は必ず宮崎駿自身の欲望を象徴してるものだったり。大衆蔑視、ねぇ。
宮崎駿の心の叫びな訳じゃん。「人間なんてゴミだー!」って、本当に言ってるんだもん、あの人。
で地震とか起きてびっくりしたんだよね、あの人。

(宇多丸)
「来ればいい。」とか言ってたらね。

(町山智浩)
でもそういう所を逆に正直に出してるからいいんであってさ。
まぁ映画ってさ、悪役を完全な外部の人として出すとただのエンターテインメントになっちゃうけども、
自分の中にある嫌なものとして悪役を出したりすると良い映画になってくるっていうことだから。良い映画って褒めてますよ。
だからこの映画も全然観てて良いと思ってるし。

<書き起こしおわり>


〇〇に入る言葉のこたえ

④観た後に埋めたくなる『〇〇』は『余白』でした!

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