残酷な「栄光」
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年9月28日 12時06分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
ブルガリアの作品です。
ストーリーは一貫として地味めですが、かなり見ごたえがありました。
国鉄の保線員のツァンコ。
彼は、線路の点検中に大金を発見します。
それを正直に届け出た彼は(ここはちょっとした真実が後にでます)、一躍時の人に。
とはいえ、それは極めて政治的なもので、彼は利用されているんですよね。
人と接するのが苦手な彼は、吃音でもあり、インタビュー映像を見たスタッフたちが嘲笑しているシーンは不愉快でした。
この「不愉快さ」が物語全体に漂っています。
彼が大切にしていた腕時計。
これは、彼を「称える」ために用意された腕時計のために運輸大臣に一旦預けられます。
しかし、預けられた人物はそれをなくしてしまう。
ツァンコにとって、称賛の証である腕時計より、父からプレゼントされたそれのほうが大切なのは明白。
一秒、一秒、人生を共に刻んできた時計をめぐる物語は、弱者であるツァンコを追い詰めていきます。
彼がうさぎを大事に育てているのも印象的です。
社会的に弱い立場にいるツァンコ。彼が育てているうさぎもまた「弱いもの」です。
物語終盤で、ひたすらうさぎのことを気にするツァンコの姿が痛々しいです。
BGMは一切なし。スタッフロールのみ音楽がありますが、これは作中で流れ始めたラジオの音楽です。
最後まで観ると、ラストがなんとなく掴めるかと思います。