かなり面白い取り組みです。
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月3日 13時42分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
ドキュメンタリー作品ですが、かなり面白い構成になっています。
物語が始まってすぐに気づく違和感。
どこか空々しい、家族の食卓が描かれています。
しかし、それがなぜか何度も繰り返されるのです。
実はロシアの監督が北朝鮮のドキュメンタリーを撮ろうとしたところ、余りに北朝鮮の当局の介入が激しく、密かにカメラを回していたのがこの作品なのです。
そのため「明るく幸せな家族像」を描くために、何度も撮り直しを要求されます。
職場の風景などでも、当局が「監督」のような役割をする有様。
それは「自由な国」にいるからこそ、異常なものに見えるのかもしれません。
指示されている北朝鮮の人々にとっては日常の延長でもあるのでしょう。
彼らは言われたように動き、「演技」します。
そんな姿を見ていると、「誰かの指示によってのみ動くのも楽なのかな」と思ってしまうのがこの作品の怖い点。
作品に出てくるのは実在する人物です。
演出中にカメラを回していたというのは気づかれていないようで、登場人物たちがその後大丈夫だったか少し気になるところです。
演出による日常を撮る合間に、ところどころに北朝鮮の風景がカットインされます。
彼らは彼らなりに幸せなのだと思います。
真の幸せとはなんだろうとも考えさせられる作品です。