センシティブの密林をかき分ける派手ではないが心に刺さる、ある種の迷宮探索物語
2021年2月15日 15時49分
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総合評価:
3.0
窪塚洋介のキャスティングが秀逸、下手をすれば噓くさくなりがちな役柄をドンピシャで納得感のある人物に仕立て上げることに成功している。
中村倫也の女優と見紛うほどの横顔を見せる場面に驚愕、また、木村佳乃が非常に上手く自分本位な母親役を演じていて見応えがある。
痴情のもつれによるドロドロした展開かと思いきや、センシティブの密林をかき分けて進むかのごとくな、ある種の迷宮探索になっていくのは、流石「ケイゾク」や「トリック」などの演出で鳴らした堤幸彦作品であるなと感じさせる。
東京の見渡す限り広がる無機質なビルやタワーと対比するかのように、その地表の、まるで深海のような地表面で静かに繰り広げられる血生臭い人間の澱のような「不快感」がじわじわと描写されていくのが、決して派手ではないが、深く心に刺さってくる。
近頃、予告編が興味をそそらない残念な作品が多い中で、予告で上手に吊り上げ、本編で更に良い意味でひっくり返すという、まっとうなコンビネーションが見られたのも良かったです。