ヤクザ映画のステレオタイプを根底から覆した大傑作
2021年2月10日 15時56分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
藤井道人監督による大傑作。
今、最も乗りに乗っている俳優である綾野剛の演技が素晴らしい。少年期から壮年期迄の20年間を一人で見事に演じ分け、その説得力の高さがとてつもない高みに本作を押し上げる重要な原動力となったのは間違いない。
もちろん、脇を固める俳優陣も皆良く、舘ひろしの懐の大きい組長役、北村有起哉の生真面目な若頭、岩松了の食えないマル暴、尾野真千子の天真爛漫さ、市原隼人の苦労人さ、磯村勇斗の義理堅さ等々枚挙に暇がない程。
いわゆる任侠映画というジャンルに染み付いてしまっていたステレオタイプを根底から覆し、リアルな社会の中における「ヤクザ」とは何であるのかを、冷徹に突き放すのではなく、親身に寄り添うような視線で情をもって描き出し、感動的な傑作となった。
本作は以降のヤクザ映画を撮るにあたって、避けては通れぬメルクマール的存在となるのは間違いないだろうし、藤井監督の名声も否が応でも高まるだろう。