制作してくれて、私達の所まで運んでくれて、ありがとうございます
2021年1月31日 09時06分
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総合評価:
5.0
春が近付いてくると、この映画を思い出す。
この作品以前の樹木希林の他の作品を余り観ていない。
とんでもなく徳江さんで、驚いた。樹木希林なのに、そこに居るのは徳江さん。
もじもじと恥ずかしそうにバイトを申し出る時枝さん。可愛すぎる。
笑顔や困惑した顔、困った顔、表情が少女のようにコロコロと変わる。すぐに思い出せるのが、笑顔の時枝さん。タイトルを思い出すと、笑顔の時枝さんが脳内再生される。
一方、不器用、訳ありの店長、千太郎。
作り笑いが張り付いた接客で、仕事以外の笑顔がない。
徳江さんとは真逆の人間。
2人が出会ったことで、お互いがお互いを尊重して距離が少しずつ縮まっていくのを見るのが心地良い。
千太郎も心からの笑顔になっていくから。
店のオーナーの一声から、千太郎が、自身の「社会」に対する力量不足を感じるのを見ると、胸が詰まる。
オーナーの一声は、心無い集団の声の代弁と銘打ったオーナーの本音。
特に今、この心無い声を発する集団に苦しめられている人が、日本だけでなく世界中に多い。存在的な意識の中、
「自分さえ良ければいい」
と思っている人達が多いというのが、この状況下で表立った感じで、嫌な雰囲気に押し潰されそう。
千太郎は時枝さんに出会えて、目に映る「当たり前」にあった物に、気が付いたのだと、本当の笑顔を見て感じた。
観た者すら、桜を見ると時枝さんを思い出すのだから。