サムライ
殺し屋ジェフ・コステロは、依頼を受けてナイト・クラブのオーナーを殺害する。だが、その日、出演していたピアニストの女性ヴァレリーに顔を見られてしまう。警察はオーナー殺しの犯人捜しに躍起になり、ジェフも呼び出され、クラブの従業員たちを前に面通しをされるが、なぜかジェフをしっかり見ていたはずのヴァレリーは彼ではなかったと証言をする。ジェフは放免されたものの、操作責任者の警視は彼への疑いを消し去ることが出来ず、尾行をつける。
この映画「サムライ」は、サムライの孤独な死と寡黙なプロの殺し屋の死を鮮やかにオーバーラップして描いた、ジャン・ピエール・メルヴィル監督のフィルム・ノワールの秀作だと思います。 この映画は、フランス映画史において"ヌーベルバーグ"と言われた、新しい波の革新的な動きがあり、ルイ・マル、フランソワ・トリュフォーら、この運動の担い手たちに多大な影響を与え、また、暗黒映画と言われる、"フィルム・ノワール"の名匠として、伝説的な監督になった、ジャン・ピエール・メルヴィル監督が、ゴァン・マクレオの原作を映画化した作品で、主演がハリウッドに渡って、実質的に失敗し、失意の内にフランスに帰国したアラン・ドロンが、「太陽がいっぱい」「地下室のメロディー」以来のはまり役で復活を遂げた記念碑的な作品ですね。 共演は当時、アラン・ドロンの夫人であったナタリー・ドロン、フランスの名優フランソワ・ペリエが脇を固め、撮影を「太陽がいっぱい」の名手アンリ・ドカエと、映画好きにはたまらないメンバーが集結しています。 主人公の一匹狼の殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)は、まるで日本の"サムライ"でもあるかのように、死地へ赴くこの男の胸中は、1本の刀に命を懸ける武士の心情の持ち主です。 彼は、寒々として空虚なアパートを出て、今日も孤独な仕事へと向かいます。 今回の殺しの仕事は、クラブ"マルテ"の経営者を殺す事で、そのアリバイ工作を情婦(ナタリー・ドロン)に任せ、その仕事はうまくいったかに見えましたが、逃走の際にピアニストのヴァレリー(カティ・ロジェ)に顔を見られてしまいます。 ジェフをかばったヴァレリーの証言に不審を抱いた警部(フランソワ・ペリエ)は、ジェフに尾行をつけます。 一方、依頼人もジェフを狙い、消そうとしますが失敗。 そして、ジェフのもとに新たな殺人の依頼が来ますが、何とその標的はジェフをかばったはずのヴァレリーだった----、という展開になっていきます。 この映画の題名の「サムライ」は、もちろん日本の武士道に由来しているのですが、常に死と直面し、最後には自ら進んで死地へと赴く、この映画の主人公に"武士道と共通の精神"を見出して、監督のメルヴィル監督が命名したものだと言われています。 クールでストイックで、己の価値観とスタイルを持つ、孤独な一匹狼の殺しのプロフエッショナルの寡黙な男を、ソフト帽にトレンチ姿のアラン・ドロンがその鋭利な刃物を思わせる、静かで厳しい中にもゾッとするような美しさをたたえて好演していると思います。 そして、メルヴィル監督のスタイリッシュでクールなハードボイルド・タッチの演出スタイルが、この映画の全編に横溢していて、1カット、1カットがまさに一枚の絵画を見るようで、観る者の感覚を痺れさすような、陶酔的な心持ちへと誘ってくれます。 サムライの孤独な死と、寡黙なプロの殺し屋の死を、鮮やかにオーバーラップさせて、ピーンと張り詰めた緊張感のある映像で、クールにスタイリッシュに描いた、ジャン・ピエール・メルヴィル監督のフィルム・ノワールの秀作だと思います。
このレビューにはネタバレが含まれています
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