イン・ザ・ハイツ
ニューヨークの片隅にある街、ワシントン・ハイツ。祖国を離れてそこに暮らす人々は、ストリートに繰り出しては歌とダンスに興じていた。うだるような暑さだった真夏のある夜、大停電が発生。進学、仕事、恋で悩みを抱えながらも夢に向かってまい進していた若者4人の運命が、停電をきっかけに思わぬ方向へと動き出す。
かねてよりミュージカル映画をドルビーシネマで観たいと思っていたが、満を持してインザハイツを鑑賞。基本的に私はミュージカル映画があまり好きではない。ジャンルで言えばドラマや伝記系、ストーリーは凝っていればいるほど好きである。それゆえどうしても音楽に時間を割いてしまい、ストーリーの内容が薄まってしまうミュージカル映画を観ることは自ずと少なくなる。しかしこのインザハイツ、素晴らしかった。 この映画で描かれる登場人物たちのエネルギーを分けてもらったからだろうか、鑑賞後は「自分の悩みや不安などちっぽけなものだ」という気持ちになるパワフルな映画であった。 ただ、内容とは別のところにこの映画を楽しめた最大の理由があるのではないかと考える。それは「ミュージカル✖ラップ」である。 この映画を観るまで私がミュージカル映画に抱いていた印象は、普通に話していたのにいきなり歌い、踊りだすというものだ。いまいち印象が湧かないという方は「レ・ミゼラブル」などを思い浮かべてもらえればいいだろう。そう、いきなり歌いだすそれである。 しかしこの「 In The Height 」だがほとんどのミュージカルシーンにラップが用いられている。故に自然体、まさに会話を聞いている感覚である。実際に複数人で歌う楽曲が大半を占めており、リズムも適度に外してくるので歌っているという印象よりもリズミカルに話しているという印象のほうが強いかもしれない。 実際にYouTubeに映画本編の動画が何本か掲載されているので、時間がある方は是非見ていただきたい。ミュージカルが苦手な人もあまり抵抗は感じないのではないだろうか。 ラップでまくしたてるような彼らの歌唱には、もはや普通のセリフよりもずっと魂が宿り、その魂は私たちのそれさえも震わす。普段ラップ聞かないのにこんな絶賛するのもなんですけど。
このレビューにはネタバレが含まれています
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