都会に咲く2輪のモラトリアムな花
2021年8月16日 12時32分
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総合評価:
4.0
お洒落なカフェから物語は幕を開けていきますが、店内には1台のスマートフォンを使ってふたりで音楽を聴いている若い男女がいます。一見すると仲睦まじいカップルにも思えますが、それぞれがイヤホンのLとRを使っているところに注目して観ると面白いです。
たとえどんなに素晴らしい曲だったとしても、完成されたものを左右で分け合うことによってメロディーの良さや歌詞の感動は半分しか伝わりません。同じ価値観や将来の夢を共有しながらも、やがては別々の道のりを歩んでいく恋人たちを象徴しているようで切なくなるでしょう。
主人公の山音麦を演じているのは菅田将暉、ヒロインの八谷絹役は有村架純と今をときめくふたりのキャスティングが豪華ですね。映画の序盤でこそいかにもお気楽なフリーターといった雰囲気だった麦が、少しずつスーツの似合う堅実派になっていくところに注目してください。年齢を重ねても自分の生き方とプライベートな時間を何よりも大事にする、絹とのコントラストが効果的でした。