推定無罪の原則の危うさ
2021年2月21日 16時07分
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総合評価:
4.0
宣伝文句に、「ヒッチコック狂による完全犯罪」とかなんとか書いてあり、
何かヒッチコックの映画と関係があるのかと思ったが、全く関係がなかった。
フランスで実際にあった事件を基にした映画。
ジャック・ヴィギエという大学教授が妻の殺人容疑者となり、その裁判シーンが
映画のほとんどとなっている法廷物。
細かなカット割りがテンポよくドラマを進めていく。
ちょっとフランス映画には珍しいタイプかな、と思った。
容疑者であるヴィギエの娘が自分の子供に勉強を教えてくれているため、
その娘の父であるヴィギエ無罪のために奔走する女ノラをマリナ・フォイスが熱演している。
何故ここまで他人のことに入れ込むのか、という声もあるだろうが、劇中に出てくる、
きっちりとした仕事ぶりを見れば、ああ、そういう性格なんだな、ということが分かり、
腑に落ちてくる。(しかしノラという人物は創作であるとのこと)
前に、日本はフランスに比べ「推定無罪の原則」の考え方が弱い、という
記事を見かけたことがあるが、この映画、この事件はフランスで実際に起きたものだ。
どこの国でも検察側が強い執念を持って事件に当たると、推定無罪の原則が
覆ってしまうことがあるということは非常に怖いことだと感じた。
ラスト、弁護士による最終弁論にはグッとくるものがあり、法廷物の新しい名作の誕生、
と言いたいところだが、実話の映画化となると、結局のところホントのホントはどうなの?
という疑問がどうしても残ってしまい、100%スッキリとはいかないのがちょっと残念か。