歴史の闇に光を当てる
2021年7月22日 06時14分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
第二次大戦勃発と同時にナチスドイツの侵攻にさらされて、終戦直後から冷戦時代にかけてはソ連軍の支配下に。列強諸国に翻弄されていく小国の苦悩が冷徹に、時にはワイダ監督の個人的な体験を交えて映し出されていました。
幼い娘を抱えながらも生き別れとなった夫・アンジェイを探し続ける、アンナというひとりのヒロインの目線からも感情移入できるでしょう。身の危険を察知したポーランドの女性の中にはロシア人との入籍を選ぶ人も多い中で、愛する人の帰還を信じてアンナが下した決断には胸を打たれます。
壮絶な虐殺の犠牲になったのは、アンジェイのような軍人ばかりではありません。小説家や大学教授など武器を持たずに自由と平和を訴え続けた人たちが、「学問の敵」というレッテルを貼られて収容所へと送られていく様子には憤りを感じます。歴史の中で過ちを繰り返さないためにも、10000人の遺体が発見される衝撃的なシーンから目をそらす訳にはいきません。