バイロケーション
結婚後も画家を夢見て、キャンバスに向かう日々を送る高村忍(水川あさみ)。ある日、スーパーでニセ札使用の容疑を掛けられたことから、見た目はうり二つだが全然違う別人格の“バイロケーション”(通称バイロケ)と呼ばれるもう一人の自分が存在することを知る。さらに、バイロケはオリジナルよりも攻撃的で……。
見たら即死というドッペルゲンガーとは一線を画した、「バイロケーション」の設定が上手く効果を発揮しています。もしも自分とまったく同じ姿形をした人間がいたら、面倒な事は全て引き受けてくれるかも… そんな夢のような物語かと思いきや恐るべき落とし穴が待ち受けていました。 もうひとりの自分との直接対決という超常現象をテーマにしながら、ヒロイン・桐村忍のごく普通の夫婦生活が平行して映し出されていくのが面白いですね。視力にハンディキャップがあるものの心優い夫の勝、ふたりが暮らしているマンションの508号室、忍がアトリエ代わりに使っている605号室。コンクールに応募するために忍が製作中の絵と、窓から見える風景との微妙なズレに騙さないように。 左遷させられた元エリート刑事から、難病の息子を抱える母親まで。忍の周りで少しずつ増えていく「バイロケ仲間」たちとの交流会や、運命共同体のような関係からも目が離せません。彼ら彼女たちが皆一様に口にする「絶対に渡したくないもの」を守り抜くことができるのか、終盤で忍に突き付けられる究極の二者択一は必見です。
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