閉ざされた医療現場に希望が射し込む
2021年9月23日 03時32分
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4.0
医師による電気ショックやロボトミー手術、暴力を振るう看護師、身体拘束を受けて人権を軽視される入院患者たち… 今でこそ「クリニック」や「メンタルヘルス」といった柔らかな看板が街中でも掲げられていますが、1944年南米ブラジルでの精神医療の現場は悲惨です。
社会から隔絶されたかのような閉鎖的な病棟へ、たったひとりで乗り込んでいくニーゼ・ダ・シルヴェイラはまさにひと筋の光ですね。孤軍奮闘する彼女の姿に触発されるかのように、流れ作業のごとく仕事をしていた同僚たちも少しずつ心変わりをしていることが伝わってきます。
シュールなタッチを得意とするフェルナンド、東洋の文化への理解が深く仏教画のような作風のカルロス。世間からは「変わり者」の烙印を押された彼らたちが描く絵は、深い知性と優しさに満ち溢れていました。作業療法とは名ばかりの強制労働が、ひとりひとりの個性と才能を引き出す画期的な治療法へと生まれ変わる瞬間は見逃せません。