ニーゼと光のアトリエ
1943年のブラジル。精神病院に勤務することになったニーゼ(グロリア・ピレス)は、院内で行われている電気ショック療法の様子に衝撃を受ける。彼女は暴力的な治療を拒否した結果、患者たちに壊れたものの修理やトイレ掃除などをさせる部署に回される。ある日、彼女はアトリエを開き、絵の具と筆で彼らの心を解放しようと試みる。
医師による電気ショックやロボトミー手術、暴力を振るう看護師、身体拘束を受けて人権を軽視される入院患者たち… 今でこそ「クリニック」や「メンタルヘルス」といった柔らかな看板が街中でも掲げられていますが、1944年南米ブラジルでの精神医療の現場は悲惨です。 社会から隔絶されたかのような閉鎖的な病棟へ、たったひとりで乗り込んでいくニーゼ・ダ・シルヴェイラはまさにひと筋の光ですね。孤軍奮闘する彼女の姿に触発されるかのように、流れ作業のごとく仕事をしていた同僚たちも少しずつ心変わりをしていることが伝わってきます。 シュールなタッチを得意とするフェルナンド、東洋の文化への理解が深く仏教画のような作風のカルロス。世間からは「変わり者」の烙印を押された彼らたちが描く絵は、深い知性と優しさに満ち溢れていました。作業療法とは名ばかりの強制労働が、ひとりひとりの個性と才能を引き出す画期的な治療法へと生まれ変わる瞬間は見逃せません。
このレビューにはネタバレが含まれています
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