絶望的なヒエラルキー
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年8月25日 15時25分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
概要を見て「CUBE」っぽい話かなと思いましたが、状況は似ているものの少し違いました。
深い深い穴。
そこには数百の層があり、各層にふたりずつひとがいます。
タイトルの「プラットフォーム」はそこに降りてくる食台のことです。
何人もの料理人が手をかけた料理が、本来は豪華絢爛。
しかし、各層でそれを分けることになります。
どの層の人物も生きるために必死。
貪り食う様がどこか汚らしく、表情も醜くて人の業のようなものを感じました。
本作は観念的なものを描いた作品なので、設定やストーリーなどのツッコミどころはスルーでいいかと思います。
下層になってくると、食べ物はほとんど残されていない、そんな場所に「ドン・キホーテ」の本を持ってくる主人公の浮世離れ感がよいです。
この施設のえぐい点は、一ヶ月ごとに眠らされて層が変更されること。
当然、みんな状況を知っているので下層に落とされると絶望します。
このあたりは人間のヒエラルキーを指しているように感じました。
富の最上層から下層に落ちたときの絶望は計り知れませんし、下層から上層にのし上がった時に傲慢になってしまいがちなのもそうです。
主人公はドン・キホーテのように理想を追求する愚かなところもあるけれど、終盤からのシーンは「最後の晩餐」をイメージしました。
最下層にいた「無垢な者」。そこからの展開が少し「CUBE」と重なるものがあり、面白く観ることができました。