「見えていない」演技が素晴らしい
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月27日 12時30分
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総合評価:
4.0
若き青年・チャーリーと目の見えない退役軍人・フランクとの心の触れ合いを描いた作品です。
フランクを演じるのはアル・パチーノ。
彼の演技の素晴らしい点は「見えていない」ことがはっきり分かるというところです。
「盲目の主人公」というのは古今東西さまざまな映画にでていますが、目の焦点がどこかに合っていて「見えていない」目ではないんですよね。
この点において、アル・パチーノ氏の演技はかなり卓越したものがあります。
目の焦点がどこか中空を彷徨っているのです。
チャーリーと対面で話すシーンでも、彼に目の焦点が合っていません。
これはかなり困難なことで、それを実現させたアル・パチーノ氏は大変素晴らしいと思います。
ストーリーは頑固で偏屈なフランクとの触れ合いを描いた、よくあると言えばよくある作品。
しかし、その中でフランクの少しヤケになっているような乱暴な行動にどこか悲しみを覚えます。
印象的だったのはフランクがフェラーリで街を爆走するシーン。
当然目が見えないので、チャーリーの手助けを借りながらの運転ですが、そこで見せるフランクのどこか恍惚とした表情がよかったです。
このシーンでももちろんフランクの視点は「見えない」ものであり、アル・パチーノ氏の演技にも魅了されるシーンのひとつになっています。
アカデミー主演男優賞をとったのも納得の作品です。