ハツカネズミに愛着を覚えるようになるぞ!
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年9月14日 13時39分
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総合評価:
5.0
原作はスタインベックということを知らずに見ても、そうでなくても必ず人の胸を打つ作品です。
1930年代、ジョージとレニーは流浪の旅をしながら、畑仕事で金を得ています。彼らはいつか共同経営の牧場を購入するのが夢。しかし、レニーは大男でありながらも知恵が若干遅れており、あらゆる行き場で問題を起こしてしまいます。ジョージはそれでも決して見捨てることなく、共に旅を続けたのです。
新しい職場でさまざまな労働者に出会うふたり。レニーはその愚鈍さからバカにされることが多くとも、ジョージは彼を庇いながら仕事をしていました。
「労働者」のすすけた感性や、ねたみなどが描かれており、とにかく金がほしいと貪欲である様子がよくわかります。そこにレニーのようなタイプが入れば、必ず問題が起きるでしょう。しかし彼らも夢がありながら、人に使われているという悲しい面々であることが描かれています。
大男のレニーは可愛い動物が好き。しかし力がある彼は、いつもハツカネズミを握り殺してしまうのです。それと同じように、ジョージに思いを寄せる娘をレニーはうっかり殺してしまいます。
農場にいられなくなったジョージは、始末は自分の手でつけると言い、レニーのもとへ銃を手にしながら訪れます。
レニーの純粋さは時に人を傷つけてしまうのです。純粋さが生きていくこと自体、とても難しいことになったアメリカ。労働者が邪魔だと思えば、レニーは死ぬしかないという現実が、非常に胸に刺さります。
労働者たちの苦労とレニーの心の美しさが魅力の作品です。