今年いちばんの混乱!
このレビューにはネタバレが含まれています
2024年7月2日 10時18分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
「ドライブ・マイ・カー」の監督で、なおかつ評判を呼んでいる作品ということで、とくに前知識なしで鑑賞。
え⁉え⁉え⁉
というラストで、もう面白かったのか面白くなかったのか、それすらも判断できないような混乱した感情で劇場を後にすることになった。
映画の冒頭、下から見上げた木々と空をひたすら追っていくシーンがビックリするほど長々と続き、観客に壮大な???と不安感をもたらす。
その後、自然豊かな町で暮らす巧(たくみ)の薪割りや水汲みのシーンなどをゆっくりじっくり見せられ、次の展開がなかなか起こらない。
正直このへんは、かったるい演出だなぁ…つまらんなぁ…と感じていた。
(鑑賞後に思い返してみると、これはこれで効果のある演出だったかもと思えた。まぁ好きではないが…)
そして、役者の感情を抑えた棒読み的なセリフまわし。
「ドライブ・マイ・カー」でも見られたが、この演出も個人的には苦手だ。
感情的な演技やセリフまわしをすると、人物や言葉に一方向の色がついてしまうので、それを避ける意図があるようだ。
この演出により、観客は勝手に考え、想像し、それぞれがいろいろな解釈をする。
なるほど、その通りだな!とは思う。
ただ、やはり発するセリフにその都度違和感を感じてしまうのも事実…。
物語は、住民へのグランピング建設の説明会で、急にスリリングな展開になり、一気に引き込まれる。
ここからのあらゆる場面の会話劇は、本当に見事で面白い。
説明会での住民と担当者・高橋のやりとり。
芸能事務所でのコンサルとのオンライン会議。
高橋と黛の車内の会話。(いちばん好き!)
他にもうどん屋のやりとりなど、緊張感あり、笑いありで、映画観ながらすごいなぁと感嘆。
当初、嫌な奴で悪役に見えた高橋も、なんだか憎めない人間性(調子のいい奴だが…笑)も見えてきて、なるほど、「悪は存在しない」とはそういうことか!と少し思いかけていた…。
さらに、でも生きるうえで環境汚染をする人間は、自然や野生動物にとっては悪かぁ…なんて考えていた…。
が…少し分かったような気になっていた自分は、ラストで一気に突き放された…。
ん⁉
どういうこと…??
ジャンル変わった…??
このラストが話題のようだが、それを知らずに観たため、本当にえぇぇぇぇ⁉となった。
頭が混乱したまま、投げっぱなしで映画は幕を閉じた。
周りの観客もおそらく混乱したまま、言葉少なに席を立っていた。
そして、ここからたぶん各自頭の中で考察を始めたと思う。
いや、考えずにはいられないでしょ、あの終わり方‼
悪なんていないと思わせつつ、いやいや、悪は不意にやって来るぞということなのか…とか。
そもそも巧は、住民から信頼されているとはいえ、思い返せばずっとミステリアスな存在で、言動や行動に「ん⁉」と思うところあったしなぁ…とか。
結局、考察力のない自分には「これだ」という答えは見出だせず、映画レビューや解説動画を見ることに。
その中には「なるほど!」と思わせてくれる考察もいくつかあり、みんなすごいなぁと感心。
個人的には、映画内で終始野生の鹿についての会話があるので、その鹿の話の内容と同じようなことが起きたのではないか、という解説がいちばん納得できた。
まぁ投げっぱなしの結末で、解釈も完全に観客に委ねられるので、起承転結のわかりやすい映画が好きな人にはオススメできないけど、やっぱりこんなに観終わった後に考えさせられたり、誰かの感想や解説が気になる時点で、良い作品に間違いないと思う。