スピンオフ作品として十分すぎる出来!
このレビューにはネタバレが含まれています
2024年6月19日 02時10分
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総合評価:
5.0
前作の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」同様、めちゃくちゃ楽しかったが、映画レビューを見てみると、絶賛多数の中、意外と否定的な感想もチラホラ。
「残酷で、アクションばっかりで、ストーリーが面白くない」
「マッドマックスの1作目と2作目のファンからすると、怒りのデス・ロード含め今作フュリオサも、マッドマックスシリーズとして認めたくない」
…など、このへんの感想は好みの問題なので良いのだが、
「怒りのデス・ロードと比べると劣る」
「前作は超えられなかった」
…という指摘は、お門違いな気がする。
もちろん、「怒りのデス・ロード」は大傑作だが、今作はそもそも「怒りのデス・ロード」の前日譚であり、マックスも登場しない(ちょい映るが)スピンオフ作品なわけで、出来不出来はあるにせよ、比べること自体ナンセンスであり、前作を超える超えないというものではない。
スピンオフ映画は、互いの作品を補完し合う役割がある。
その点で、本作「フュリオサ」を観れば「怒りのデス・ロード」がさらに面白くなるし、その逆も然りである。
互いの作品を高め合っている時点で大成功だと思う。
さらに言えば、あの「怒りのデス・ロード」と同じテンションの作品を9年後にまた作れること自体が凄すぎる!
相変わらずの登場キャラクターや数々のマシン(乗り物)のディテールにまでこだわった圧倒的なビジュアル。
脇役やモブキャラにまで個性が見られ、彼らにも裏には物語があることを想像させられる面白さ。
そして、バリエーション豊富なアクションシーン。(アイデアの量が尋常じゃない!)
とにかく、映像の情報量が過多で、何回観ても新しい発見がありそう。
そんな中、個人的に気に入ったのは、バイク3台を馬車に見立てて走らせるディメンタス。(あれはどういう構造で運転できてるんだろうか…笑)
ディメンタスは、テディベアを肌身離さず持ち歩いてるのもカワイイ!
あとは、山場であるウォー・タンク(巨大トレーラー)のアクションシーンのボミーノッカー!
ネーミング最高だけど、その仕掛け使う機会限られるでしょ…笑
そして、愛すべきチビウォーボーイ…哀
いや、本当に誰がどうやったらこんなバカなアイデア思いつくのか⁉(褒め言葉!)
ジョージ・ミラー監督含め、映画スタッフはスゴイとしか言いようがない。
ていうか、ジョージ・ミラーは80歳目前でこの映画撮るってヤバイでしょ!
アニャの演じるフュリオサも思ったより良かった。
シャーリーズ・セロンのフュリオサのような肉体的・格闘的な強さはないが、アニャはあの目力で若いフュリオサの芯の強さを表現できていた。
また、どこかマックスの雰囲気に似た警護隊長ジャックの存在も面白い。
フュリオサの師匠であり、相棒となるが、この後の「怒りのデス・ロード」では、フュリオサはマックスとバディを組むことになり、あの場面でフュリオサはマックスにジャックを重ねていたのかと思うと、とても感慨深い。
本作の宿敵ディメンタスは、極悪ではあるが、風貌、キャラ含め、どこか憎めない。
ただ、フュリオサは時とともに戦士として成長し、感情を押し殺して強くなっていくのに対して、ディメンタスはだんだんと勢力は拡大していくが、イモータン・ジョーと違い統制が取れなくなり、心も見た目も疲弊していき(愚痴も多くなり)、敵として弱くなっていく。
今作の最大のヴィランであるディメンタスが、終盤に向かって徐々に衰えていくことには少し戸惑った。
ディメンタスにも子供や家族を亡くした辛い過去があり、希望を失ったディメンタスは、ただ生き延びるために現在のようなキャラになったのかもしれない。
そう考えると本作は、フュリオサの物語でありながら、同じように家族を亡くしたディメンタスの物語でもあると感じた。
クライマックスのフュリオサとディメンタスの対峙では、長いセリフのやり取りがあり、観客が望むようなスッキリした終わり方にはならない。
ここは好き嫌いが分かれそうだが、観終わってみると、これはこれで良い気がした。
最後にフュリオサを復讐心だけで突き動かされるキャラにさせず、うまく「怒りのデス・ロード」のストーリーに繋げていると思った。