大人の心を通して、人生のかけがえのない時期を描いた映画
2025年4月21日 22時59分
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総合評価:
4.0
この映画「スタンド・バイ・ミー」は、男であれば、誰でも心の中で、そっと追憶の涙を流すだろうと思う程、いい映画ですね。
原作は、スティーブン・キング。恐怖小説の第一人者ですが、この作品はがらりと違って、少年期への限りない愛着を込めた、追慕の詩になっていると思います。
"私の傍らにいて"-------友情と未知への憧れと、人生の希望に満ちた少年時代。
この映画は、大人の心を通して、人生のかけがえのない時期を振り返っていきます。
オレゴン州の片田舎。仲のいい四人の少年。彼らは、ある冒険旅行に出発します。
山の奥に、行方不明になった少年の死体があるという噂を聞き、自分たちが発見して届ければ、町の英雄になれるというわけです。
家庭の事情も性格も、それぞれに違う四人の少年。
彼らにとって、この町こそ"世界"であり、町を出ることは、"世界"を飛び出す大冒険だったんですね。
私自身にも憶えがあります。少年時代のバラ色の記憶が-------。
山の中を走り、川をさかのぼり、列車の線路をたどった大冒険の日々。
この四人の少年の行動には、そのまま私のノスタルジイが、走馬灯のように重なります。
考えてみれば、少年というものは、冒険によって成長するもの。
少年時代とは、行動によって、友情が結ばれるもの。
そして何より、その一つ一つの記憶が、人生の基本を創っていくものだと思います。
この映画が、たまらなく私の心を濡らすのは、この点なんですね。
オレゴン川の山河を捉えた、みずみずしい画面が、その想いを増幅するのです。
そのみずみずしい画面を紡ぎ出す、ロブ・ライナー監督の映像感覚の見事さ。
そして、映画の前後に、ほんの少し姿を現わす、作家役のリチャード・ドレイファスが、実にいいんですね。
短い出演場面で、堂々の存在感を示してくれます。
画面全体をひきしめ、彼の存在があってこそ、少年期の意味が、私の心に深く、深く、焼き付いて離れません。