黒澤明の脚本を土台にして、新しいスタッフによって作り上げられた作品
2024年7月7日 11時01分
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総合評価:
4.0
かつて黒澤明監督が、映画化に執念を燃やしていた作品が、この「暴走機関車」ですね。
本格的な日米合作の超大作になるかと期待されていたのだが、様々な事情があって実現に至らなかった。
その黒澤明の脚本を土台にして、新しいスタッフによって作り上げられたのが、このアンドレイ・コンチャロフスキー監督、ジョン・ヴォイト主演のこの映画だ。
アラスカ。極寒の刑務所。脱走犯二人。四重連機関車。脱走列車。
だが、機関士は発作を起こして急死。最先端の機関車には入れない。
もう一人の乗務員。女。
この三人を乗せた暴走列車。時速150キロ。大雪原。ヘリで追う執念の刑務所長。
実にワクワクするほどの面白い映画だ。
映画ならではのダイナミックな興奮で、我々観る者をグイグイと引きずり込んでしまう。
突っ走る列車、何とか最前列の機関車に飛び乗ろうとする脱獄囚、上空から縄梯子で降りようとする追跡者。
カメラ自体を別のヘリコプターに積んで、平行移動してみせる迫力は、とにかく凄い。
監督は、当時のソ連の映画監督アンドレイ・コンチャロフスキー。
撮影は、007シリーズのアラン・ヒューム。
それまで日本の「新幹線大爆破」やアメリカの「大陸横断超特急」等、列車の暴走を描いた映画には、成功した例が多いのだが、映画=活動大写真の名の通り、動くもの、突っ走るものは、対象の素材として、実にぴったりなのだ。
この作品では、更に極寒の極地という背景が、緊迫感をより増していると思う。
ただ、惜しむらくは、観ていて、列車が走り出すまでの描写が重過ぎる。
脱獄囚と刑務所長の確執という図式の説明がつらい。
これがもし黒澤明監督だったなら、こうした説明を超えたドラマが、そこから爆発していたと思う。
主人公の脱獄囚役のジョン・ヴォイトは、確かに凄いメイクで熱演しているが、この役は、かつてのリー・マーヴィンくらいの個性の強い、重量級の役者が演じていたら、もっと凄みが出ていたのではないかと思いますね。