終盤からの怒涛の勢い
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月25日 12時27分
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総合評価:
4.0
モーテルで暮らしているアグネスと、友人に紹介されたピーターという男性の物語。
舞台はほとんどがそのモーテルで描かれています。
狭い空間の中でのストーリー展開ですが、中身は割と濃いです。
アグネスがモーテルで暮らしているのは、元夫・ジェリーへの警戒感。
かつて彼女に暴力をふるっていたジェリーは刑務所から出所したばかりで、その存在に怯えています。
作中で、ジェリーがアグネスの部屋へきて、相変わらず暴力を振るうシーンがあります。
アグネスは強硬に抵抗することなく、ジェリーの言い分に頷くところは夫婦間のDVにある現実的な面を描いているように感じました。
一方、ピーターはかなり非現実的な人物。
アグネスが浴室の火災報知器を外してほしいとピーターに依頼するのですが、その後の彼の言うことがおかしいのです。
危険な放射性物質が含まれているものだ、と言うところに「ん??」と思っていたら、やはり少し異常性のある人物で……。
彼は、アグネスの部屋に「虫がいる」と言い出し、やがて部屋は虫対策のグッズだらけに。
はじめは訝しく思っていたアグネスもやがて巻き込まれていきます。
このあたりの展開が非常に面白いです。
特にラストあたりのアグネスの長台詞。
彼女の10年前に行方不明になった息子への思い、ピーターが語る陰謀論がないまぜになって彼女の精神はある意味で昇華されていきます。
耐えられない過去って「なにかのせい」にすると楽になるんですよね。
そういった人間の過去から逃げたい心がうまく描かれていました。
狂気が狂気を呼ぶ、ちょっとサイコなサスペンスです。