切ないロードムービー
2021年9月1日 21時18分
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総合評価:
4.0
ライ・クーダーのなんとも言えぬ穏やかで切ないメロディと、ノスタルジックな色味や風景にぐっとくる。物語自体は、幼い子供を弟のウォルトに預けたまま行方不明になった兄トラヴィスが、四年ぶりに見つかったことから物語は始まるのだが、久々に会った息子のハンターと父親であるトラヴィスの微妙な関係やハンターを我が子として育ててきた弟夫婦の不安、トラヴィスの最愛の妻ジェーンが男の元を去った理由など、どれもちょっぴり切なくほろ苦さがある。
子供を捨て、失踪したトラヴィスの身勝手さに、本来ならイライラしそうなのだが優しく包み込むような風景や、音楽に癒されてしまう不思議な作品である。
愛しすぎるが故に、思わず相手をがんじがらめに縛ってしまうトラヴィスが、見ていたものは、ジェーンではなく自分自身だった事がわかる比喩表現が秀逸なのである。
男女のどうしようもなさだけではなく、家族や血の繋がりのどうしようもなさが、描かれている。男女の終りと家族の始りの映画である。