A24らしい良作!
このレビューにはネタバレが含まれています
2025年5月14日 15時43分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
なんか脱出モノのように宣伝されていたけど、そこはA24の作品、脱出がメインの映画ではまったくなく、「宗教とはなんなのか!?」という論争映画だった。
そのあたりが期待してたものと違うと賛否分かれた部分だと思うが、個人的にはとても楽しめた。
まずはなんと言ってもヒュー・グラント!
最初は愛想の良いおじさんから、徐々にこの人なんかおかしいかも…!?に変わっていく感じ。
そして、常に冷静でどこかニヤついたまま持論を語り、少しずつ静かに圧力をかけていく感じ、その表情含めほんとに絶妙!
さすがの演技だった。
そのミスター・リードが、「モノポリー」やレディオヘッドの「クリープ」を例に出して論じる宗教反復論もめちゃくちゃ面白くて興味深い。
この講義もっと聴きたいという感じになるが、そもそもこの講義のやり慣れてる感が笑える。(そこは後に繋がる。)
そんな反復論を語りながら、モルモン教や宗教の矛盾を突き、反論も論破して、布教しに来た女の子2人を少しずつ詰めていく。
このへんの意地の悪さもすこぶる面白い。
モルモン教についてはなんとなくの説明しかないので、鑑賞前にどんな宗派なのか少し知っていたほうが楽しめると思った。
そういう自分も、あんな下着を着ていることは初めて知った。(ていうか、ひどいイジメだったな…。)
この女の子2人のキャラや演技もとても良かった。
どちらもタイプの違う可愛らしさがあるのだが、ソフィー・サッチャー演じるシスター・バーンズは冷静さがあり、表情に気持ちの強さや頭の良さが表れていた。
対照的にクロエ・イースト演じるシスター・パクストンは心に脆さが見え、落ち着きがなく、相手に合わせようと必死で不器用な感じである。
この2人のキャラの違いが、ストーリーをさらに面白くしていると感じた。
そして、そう見ると、この映画はシスター・パクストンの成長物語とも言える。(後半、かなりの急成長ではあったが…笑)
後半の地下に行ってからの展開は、正直そこまでの新鮮味はなかったが、それでも随所に印象に残るシーンはあった。
ミスター・リードのトンデモ野郎ぶりは「ドント・ブリーズ」っぽかったが…笑
リードは最終的に、宗教とは「支配のシステム」であるという答えに行きつき、パフォーマンスとしてキリストの復活のように死者をトリックを使って蘇らせ、それを2人に見せつける。
しかし、その後本当に死者が蘇る奇跡が起きる。
このシーンは賛否を呼んでいるが、自分は完全に賛である。
宗教の矛盾を突く映画ではあるが、完全に宗教を否定しない作り手のフェアさを感じた。
ラストのシスター・パクストンの「祈り」についてのセリフが胸を打つ。
祈ることで何かが変わることはないかもしれない、だけど人に対して祈りを捧げることは美しいよねという…いろいろ矛盾はあるけど、宗教とは「生き方」なんだと最後の最後にシスター・パクストンに教えられた。
本当にフェアな着地だと思う。
まぁ正直前半のほうが楽しかったけど、宗教映画としてめちゃくちゃ面白かった。