工夫を凝らした良作
このレビューにはネタバレが含まれています
2025年8月7日 01時42分
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総合評価:
4.0
時系列バラバラ系の映画。
それがうまく機能していると思う。
全6章+エピローグの物語の順番(時系列)を入れ替えて見せることで、必然的に観客はその前の章に起きた出来事を想像することになり、その観客の想像(先入観)がこの映画のキモとなっていた。
そして、この「先入観」というワードこそが、この映画のテーマでもあった。
前述したとおり、この時系列入れ替え要素は十分に機能しているが、わりと早い段階で種明かし的なことはされる。
が、そこからもちゃんと面白いのが本作の良いところである。
個人的には、モーテルから白昼、下着姿の主人公の女が走って逃げる一連のシークエンスが最高だった。(映画冒頭の赤い服着て走って逃げるスローモーションもカッコ良いが。)
このフィルムで撮影されたそれぞれのシーンは、美しくアート的で本当にスタイリッシュ。
そして、なにより主人公の女「レディ」を演じたウィラ・フィッツジェラルドの演技・存在感が素晴らしい。
ぜんぜん知らない女優さんだったが、これからブレイクするんじゃないかというくらい印象的だった。
もちろん、男側の「デーモン」もとても良かったのだが、終末論者の中年夫婦(料理…笑)や、警察の男女コンビ(おじさんと若い子)、そして最後のおばちゃんなど、脇役のキャスティングがめちゃくちゃ絶妙だった。
映画のラストもいろんな解釈ができると思うし、主人公・レディの過去を勝手に想像するのも面白い。
傑作とまでは言わないけど、97分のちょうどいい上映時間で楽しめる良作だと思う。