切ない殺人者
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年5月19日 13時52分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
実際に起きた、祖父母殺害事件を元にした作品です。
主人公・周平がとにかく報われない。
母親である秋子は性的に奔放で、周平や彼の妹に対しては育児放棄といってもいいくらいの状況でした。
一方で、息子に執着を見せる秋子。
その辺りの親子関係の奇妙な歪みが物語の不協和音となっています。
路上生活状態にあった彼らは、福祉とつながることができます。
しかし、ここでも秋子の問題でそこから絶たれるシーンなどは観ていて辛かったです。
秋子は以前付き合っていた男性と別れていたのですが再会。
保護施設で生活していた彼らのところに身を寄せた男は、初めは良かったものの彼の借金のせいで逃げる羽目になります。
周平は当時工場で働いていたので、本来なら母を見捨てても良かったんですよね。
しかし、それができなかったのは幼い頃から染み付いた歪んだ愛があったのだと思います。
青年となった周平を演じる奥平大兼さんの静かな演技もみどころです。
実質的に縁を切られていた祖父母に再会し、殺害に至った彼。
その激しい行為の裏にある悲しみが強く描かれていました。