東野圭吾の小説を原作とした映画とあって、流石のストーリーと奥深さ。時間の関係上、小説の程の細かさは無くなってしまうが、映像化すること絶望や緊張感がより分かりやすく伝わってくる。
脳死状態の大切な娘・瑞穂を生きていることにするか、死んだことにするかという残酷な選択。本人に聞きたい、とセリフがあるが、本当にその通りだ。人の命を言葉一つで簡単に左右してしまう重圧は計り知れない。もしも、自分の家族が同じ状況に置かれたら、とずっと考えてしまう。主人公らは娘が生きている、という選択をしたが、自分もそうしてしまうのではないかと思う。だって心臓は動いていて、体温もあるのだ。瑞穂はラザロ現象という、脳死状態で自発的に手足を動かす反射を見せた。それを見たら、一筋の希望に縋りたくもなるだろう。また元気な頃のように動いてくれるのではないかと、諦めきれなくなるだろう。
哀しい狂気をはらんだ母親役の篠原涼子は、正に迫真に迫る演技。徐々に歪んでいく、しかし絶対的な愛を原作に忠実に素晴らしく演じていた。