リアリティを求めることだけが映画ではない
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年5月26日 12時03分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
東大卒だがバイト生活を送る、さえない主人公が、ひょんなことから近所の風呂屋で
バイトをすることとなる。しかしそこは深夜、人を殺すために使われていた~
という感じで物語は進んでいく。
殺される人たちは何をやったのか、なんでこんなにも多くの人たちが殺されるのか、
他にもツッコミどころは満載だが、何故か映画全体としては面白くまとまっており、
こういうことはツッコんではいけないんだ、という気にさせる、変わった映画だ。
いや、ツッコミながら観ていく、というのも面白いだろう。
妙に穏やかな主人公の両親、風呂屋の番台の引き出しに隠された拳銃、他にも……
何もリアリティを求めることだけが映画ではない、ということを訴えかけるような、
そんな映画なのだが、重要な点が2つあると思った。
まずキャストたちの魅力だ。
誰一人知っている役者がいない映画を久しぶりに観たのだが、主人公の男性と
彼を好きになる(これも何故かよく分からず)女の子も、特に美形という訳ではない。
しかし何故か魅力的に見えてしまう。
何度も観たくなるほどの強烈な引力はないものの、
映画全体の評価を上げるうえでは十分な役割を果たしていると感じた。
もう一つはハッピーエンドである、ということ。
映画というか物語を作ろうとすると、安易にバッドエンドに持っていってしまう傾向が
日本人にはあるように思えるが、この映画はそうではない。
特に今作のような物語であれば、バッドエンドの方がリアリティがあるのだが、
前述したように、リアリティを求めることだけが映画ではないのだ。
最終的に全体のバランスと、観客・視聴者がどこに落ちれば気持ちよくなれるか、
そこを考えて映画も作られるべきであり、そういう意味では安易にリアリティに
逃げなかった、という勇気ある選択をした今作は評価されるべきであろう。