酷評された部分を、逆に様式美だと思う人もいるはず。
2021年8月19日 20時16分
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総合評価:
5.0
異様な力を手に入れて、非日常の世界に入っていく過程がスリリングで、どこか懐かしいながらもワクワクさせられる描きかたでした。
「人間以上の力を使えるようになる」「二つの人格が一人の肉体をシェアする」など、それ自体としては多くの作品にある展開でも、シンプルで飲み込みやすいお話になっている分、非常に風通しがよくて、久しぶりに「こういうの、やっぱり好きだなぁ」と思えました。
アメコミ映画は近年どんどんスケールが上がっており、今ではイベント性の高い出来事が起こるだけでは以前ほど驚かなくなってしまった自分でも、本作はフレッシュな気持ちで楽しめました。どこかノスタルジックな、調子の良いフランキーな掛け合いの響くサンフランシスコの街が出てきて、良い意味でプレーンなアクション映画になっていて、なおかつ王道の成長物語であるという、サム・ライミ監督の「スパイダーマン」を初めて観た時のような気分でした(逆に現代性と呼べるものが「他者との共生」といったモチーフのレベルにとどまっている、と不満に思う方もいるのではないか、とは思いますが)。少し毒のある締め方もクールです。
初登場は1980年代のスパイダーマンのアメコミで、基本は悪役として繰り返し登場しつつ、主人公になるコミックは継続的にではなく断続的に発表され続けたキャラクターです。元がスピンオフだったキャラの単独映像化は「スーパーガール」や「パニッシャー」など色々あるものの、そうしたキャラクターがソロの映画でキャラ立ちできる環境があるということは、とても希望があって良いな、と思いました。