「存在」の曖昧さ
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月8日 12時48分
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総合評価:
4.0
数十名の女子高生が一気にホームから電車に飛び込む、衝撃的なシーンから始まる物語。
ここで使われているBGMは、不釣り合いなほどに明るいです。
警察でも問題視される、その後に続く集団自殺。
さまざまな人物があり得ないほど「明るく」死を遂げていきます。
物語が「自殺」を扱っているため、かなりグロテスクなシーンが多いです。
途中、ストーリーがやや混乱しますが、骨子としては「存在の曖昧さ」が描かれているのではないかと思います。
自身と他者との間での「存在感」、そしてなによりも自分自身の「存在」に対する曖昧さ。
物語中で何度も繰り返される「あなたはあなたの関係者ですか?」。
この質問こそが自身の存在に対する、自分への問いなのだと思います。
それに答えることができないほどに、自己の存在に自信がない人物。
それは精神的な意味での自殺であり、その象徴として物理的な自殺が描かれているのかと感じました。
かなり解釈の分かれる作品ですが続編の「紀子の食卓」を観ると、ある程度腑に落ちるかと思います。