「難しい｢愛｣のお話」窮鼠はチーズの夢を見る momokoさんの映画レビュー

窮鼠はチーズの夢を見る The Cornered Mouse Dreams of Cheese

難しい｢愛｣のお話

このレビューにはネタバレが含まれています

momoko

2021年9月2日 23時49分役立ち度：0人

総合評価： 3.0

原作未読で、演者さん目当てで映画を見に行きました。

映画全体としては、要所要所に画力の高さを感じました。海辺で今ヶ瀬と恭一の二人が語るシーンや、雨が降る中で環をそっと抱きしめる恭一のシーンはシンプルに美しさの塊でドキドキしました。
今ヶ瀬の心情を背景で流れる映画の台詞に描写する演出も、ものすごく凝っていて好きです。
また、大倉忠義さん、成田凌さんの高い演技力を感じられました。恭一は良くも悪くも芯がなく、とにかく流されやすい性格で見ていると段々呆れに近い感情を抱くようになりましたが、リアルに感じられるのは大倉さんのお芝居の賜物だと思います。
成田さんは、表情のお芝居が凄く良かったです。恭一が欲しくてたまらないという、少し歪んだ執着心を瞳に乗せて、ただ｢見つめる｣という仕草一つにここまで重い気持ちを乗せられるのが素晴らしいなと思いました。

少し惜しいなと思うのは、静かなシーンが多く少し冗長気味なのか、映画を見ている時の体感時間が異様に長く感じるところです。
2時間と少しくらいのはずなのですが5時間くらい見ている気分になりました。
また、ハッピーエンドとは決して言い難い結末を迎えているので、散々回り道して選んだ結果がそれ…と少し悲しくなります。
愛について深く考えるいいきっかけにはなったかもしれません。同性を愛する、ということ以外にもさまざまな愛の形が出てきます。結婚した=幸せではないし、異性を愛さないとおかしいという人も出てきます。相手が結婚していても構わないと関係を持とうとする人もいたり、とにかく良いものも悪いものも含め色々な愛に出会う映画だなと思いました。
家に帰るまでの道すがら、映画が伝えたいメッセージを考えて、半ば心在らず状態になっていました。