検索 映画ポップコーンについて
登録/ログイン

「非論理で構築された論理的世界」 第9地区 atchinさんの映画レビュー

第9地区 District 9

非論理で構築された論理的世界

2021年2月15日 14時58分 役立ち度:0人
総合評価: 5.0
「第9地区」はニール・ブロムカンプの監督デビュー作だ。
ある日突然、巨大宇宙船が現われ、そのまま空の上にとどまってしまう、
という設定は、オールドSFファンにとってはそれだけでわくわくしてしまう
何かがある。もちろんアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」からの
引用ということなのだろうが、あれが世界各国の首都上空だったのに対し、
こちらは南アフリカ・ヨハネスブルグの上空と限定されており、
しかも難民として漂着し、20年そこに浮かび続けているというところが面白い。
宇宙人たちは皆弱っていたので地上に下して一定の地区に隔離し、
そこを「第9地区」と呼ぶことにするが、トラブルが増えたため、
宇宙人を「第10地区」へ移送することが決定され、主人公のヴィカスが
その陣頭指揮を任されることになる。これを、宇宙人に対し、
人間の法の基に手続きを進めていく様はなかなか間が抜けていて面白く、
ここまでは政治的なテーマを抱えた寓話的世界観を描いた映画なのかと思っていた。
ところがここから思いもよらぬ方向へと物語が進んでいく。

まず、そもそも訳の分からない設定がいくつかあり、
例えば、宇宙人は猫のエサが好き(何故?)だとか、宇宙人の持っている武器は、
宇宙人しか使えないというか、遺伝子に反応して作用する(どういう理屈?)だとか、
宇宙船の液体燃料を吸い込むと体が異星人化していく(は?)など、
非常に荒唐無稽な決め事が存在しているのだが、それらの驚くべきエピソードを
突き付けられて頭が混乱している中、物語は何でもアリのカオス的な展開を
見せるのかと思いきや、非論理で構築された論理とでも言おうか、
この世界の中の独特の論理性は崩さず備えたまま怒涛の如く
結末を迎えていくのであって、その語り口が実に見事なのだ。
前半、宇宙人に対し無理矢理人間の法律を押し付ける様子と対比して見ていくと
とても面白い。こちら側の論理であちら側の世界を動かそうとしていたものが、
途中からあちら側の論理に巻き込まれていく。
これはある意味不条理劇とも呼べるかもしれない。
自分がこの映画で好きなところは、一見雑然としていて勢いだけで押していくように見えて、
その実きちんと練られた物語であるということと、主人公が置かれた
かわいそうな状況の中に、妙なおかしさが同居しているところだ。
例えばヴィカスは液体燃料の噴射を受け、体が異星人化していく、
研究材料として莫大な価値があるとした政府は彼の体を切り刻もうとする、
そこで彼の妻には、彼は仕事の過程で異星人のメスとデキてしまった、
としてもう彼は帰らない、と説明するところや、また、体を元通りにするため、
異星人の協力を仰ぎ、彼らがもとの星に戻る手助けをするものの、
体を治す薬(?)を持ってくるまでに3年かかる、と言われるあたりは
突っ込みがいのあるエピソードで妙にツボに入った。
詳細評価
  • 物語
  • 配役
  • 映像
  • 演出
  • 音楽
イメージワード
  • ・楽しい
  • ・笑える
  • ・泣ける
  • ・不思議
  • ・ファンタジー
このレビューは役に立ちましたか? 役に立った

オススメ情報

↓↓みんなが読んでいる人気記事↓↓

【2024年】動画配信サービスおすすめランキングに注意!人気を無料や利用者数、売上で比較!徹底版

→【すぐわかる】動画配信サービスおすすめランキング【忙しいあなたへ】人気を無料や利用者数、売上で比較!簡易版

映画のレビューを書くと、あなたの好みの映画が見つかります!

似ている作品