ゾディアック
1969年、自らを“ゾディアック”と名乗る男による殺人が頻発し、ゾディアックは事件の詳細を書いた手紙を新聞社に送りつけてくる。手紙を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール(ロバート・ダウニーJr)、同僚の風刺漫画家ロバート(ジェイク・ギレンホール)は事件に並々ならぬ関心を寄せるが……。
この映画はデビッド・フィンチャー監督作品で、フィンチャーが連続殺人事件を描いたということから、出世作の「セブン」を思い出した。 だが、この映画「ゾディアック」が「セブン」と大きく異なるのは、ここで描かれているのが実際に起こった事件であり、いまだ未解決という点だ。 それと惨殺死体だけを見せた「セブン」に対して、こちらは犯行そのものを映していく。 しかも、このときのカメラが容赦ないんですね。 次々と有力情報がもたらされるものの、どれも実ることはなく、結局は空振りに終わってしまう。 この描き方がドキュメンタリーとまでは言わないにしても、少し引いた目線で描かれる。 ところが、それがある瞬間、一気に身も凍るスリラーへと変わる。 この話法の転換が実に見事でしたね。 犯人の挑発、自己顕示欲。それにマスコミが乗ったことで、モンスターのようにその像を膨らませていった。 そして、そのことがまた真実を知りたいという男たちの執念をさらに増幅させる。 しかし、もがけばもがくほど一様に深みにハマっていく。まさに底なし沼。 フィンチャーは、そんな事件に魅入られた男たちをひとりに絞ることなく複数描くことで、この事件が生み出した不条理そのものをあぶり出しているようにも見える。 論理では決して割り切れない、人間の不可解な心理と行動。 そういう意味でも、実に見応えのある映画だった。
このレビューにはネタバレが含まれています
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